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Economist Column No.2025-019

骨太方針2025で示された新たな財政健全化目標

2025年06月16日 蜂屋勝弘


■債務残高GDP比の当面の目標
「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太方針2025)では、基礎的財政収支(PB)が黒字化した後の財政運営の中長期的な道筋が、どう示されるのかが焦点の一つであった。内容をみると、PB黒字化の達成時期については、「2025年度から2026年度を通じて、可能な限り早期の国・地方を合わせたPB黒字化を目指す」と、25年度とされていたこれまでに比べて達成時期がやや後退した表現になった。しかしながら、これは、足元の物価上昇やトランブ関税問題といった内外環境の変化を受けた実状に合わせた微修正の範囲と言えよう。むしろ、PB黒字化後の債務残高GDP比の引き下げ目標について、これまでは「安定的な引下げを目指し」と、単に方向性を示すだけだった表現が、「骨太方針2025」では、30年度までの「『経済・財政新生計画』の期間を通じて」、「まずはコロナ禍前の水準に向けて安定的に引き下げることを目指し」へと、当面目標とする水準と達成時期が具体化されている点が注目される。

■財政支出の安易な膨張を避けよ
もっとも、今後、金利上昇に伴う利払費の増加が見込まれるもとで、債務残高GDP比を安定的に引き下げるには相応のPB黒字幅を継続する必要がある。この点、「骨太方針2025」で示された成長戦略が宜しきを得ることなどによって、賃金と物価の好循環が実現すれば、税収の自然増が期待されるため、PB黒字の継続への追い風となる。しかしながら、今後見込まれる人口減少によって、わが国の経済成長が長期にわたって下押しされ続けかねない可能性を踏まえると、税収の自然増への過度な期待は禁物であろう。
財政健全化目標の達成には、財政支出の安易な膨張を避けなければならない。補正予算による歳出の積み増しの常態化を止め、補正予算を突然の経済危機や大規模災害といった当初予算策定時に予見できなかった事態への対応という本来の使い方に戻す必要がある。同時に、平時の歳出においては、政策の効果を測定し、有効性の高いものから優先的に財源を配分するというEBPM(証拠に基づく政策立案)の一段の活用などによって、既存の歳出内容を柔軟かつ大胆に見直すことが不可欠である。



※本資料は、情報提供を目的に作成されたものであり、何らかの取引を誘引することを目的としたものではありません。本資料は、作成日時点で弊社が一般に信頼出来ると思われる資料に基づいて作成されたものですが、情報の正確性・完全性を保証するものではありません。また、情報の内容は、経済情勢等の変化により変更されることがあります。本資料の情報に基づき起因してご閲覧者様及び第三者に損害が発生したとしても執筆者、執筆にあたっての取材先及び弊社は一切責任を負わないものとします。
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