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リサーチ・フォーカス No.2025-018

新たな免税店制度(リファンド方式)導入への期待

2025年06月03日 高坂晶子


2014年以来、わが国はインバウンド誘致の梃として外国人向け免税店(輸出物品販売場)制度の拡充を図ってきたが、2025年度の税制改正で新方式への移行が決まった。準備期間確保の観点から、新方式は2026年11月1日に施行予定である。

今回の税制改正の主なポイントは、①税関で購入物品の国外持ち出しが確認された場合に消費税相当分を返金する「リファンド方式」の導入、②免税対象物品の区分の廃止、③販売手続きの見直し、④免税店の区分・要件の簡素化、である。①は免税店制度の不正利用の防止、②~④は新方式の導入に伴って必要となる手続きの導入、および現行手続きの簡素化、を主眼としている。

現行制度の下で、外国人旅行消費額の伸長や免税店の広がりが実現しているにもかかわらず、今回、大幅な制度変更が行われる主な背景として、2点が挙げられる。

第1は、不正利用の横行である。具体的には、①虚偽の還付申告を行い、売り上げに係る消費税から仕入れに係る消費税を差し引いてマイナスの場合に還付される制度を悪用する、②外国人旅行者が購入した免税対象物品を国内で転売し、出国検査をすり抜けて消費税の支払いを免れる、に大別される。

第2は、免税店にかかる負荷の大きさである。現行制度では、店舗側が、免税を受ける要件の確認、不正利用かどうかの判定、購入記録の作成・送信等を担っている。特に不正利用については、転売目的の購入を見抜けなかった場合に多額の追徴課税が課される可能性があり、店舗側の負担感は大きい。

リファンド方式の導入により、①返金を受けるには出国検査を経る必要があるため、転売の確認が容易となる、②購入記録・税関確認情報に基づいて免税店が返金と税務処理を行うため、虚偽申告の難度が上がる、ことから、不正事案の減少が期待される。また、税関のチェック機能が強化されるリファンド方式の下では、店頭での確認作業の多くが不要になるので、店舗側の負荷も軽減される。

今後注目すべきは、物品の持ち出し確認の詳細である。インバウンドが急増するなか、①旅券確認端末機を多数配置して空港の混雑・混乱を回避する、と同時に、②税関職員による要確認案件を的確に抽出し厳正に検査する、ための仕組みが必要となる。免税店制度の維持には、新方式の信頼性の担保が不可欠であり、税関が実効性のあるチェック機能を発揮する仕組みが極めて重要となろう。

店舗側の負荷軽減により、従来は免税販売を敬遠していた小規模店舗、特に地方圏の事業者の参入意欲の高まりが期待される。今後は、こうした店舗への支援を通じて各地の特産品や伝統工芸品等の免税販売を強化し、現状、都市圏に集中しているインバウンドの地方誘致に役立てることが望まれる。


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