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リサーチ・フォーカス No.2025-016

トランプ政権と各国の距離―貿易収支と軍事費負担の4象限分析―

2025年05月30日 福田直之


第2次ドナルド・トランプ政権は、同盟国・友好国との関係を通商と安全保障の2軸から評価し、「貿易赤字の是正」と「軍事費負担の増額」を要求している。2025年4月には全世界を対象に一律・相互関税を導入し、米国が計上する巨額の貿易赤字の是正に着手した。また北大西洋条約機構(NATO)諸国を含む同盟国に対し、国内総生産(GDP)比2%を超える軍事費支出や駐留経費負担の増額を求める圧力を強めている。これらは米国が担ってきた経済的・軍事的な負担の各国との分担という国際関係の再定義の一環と考えられる。

米国と各国の間の貿易収支の状況(縦軸)と各国の軍事費の対 GDP 比が2%を上回っているかどうか(横軸)による4象限マトリックスにより、トランプ政権が各国との距離をどう考えるのかのヒントを得ることが可能だ。対米貿易黒字を計上し、軍事費が GDP 比で2%を下回っている第3象限の国には、日本やドイツが含まれる。第3象限は米国にとって「経済的にも軍事的にも依存度が高い国」として、最も厳しい要求が予想される。一方、対米貿易赤字を計上し、軍事費が GDP 比で2%を上回る第1象限の国は米国にとって都合がよい。ここに含まれる英国はすでに米国との間で条件付きながら自動車の関税引き下げで合意に至っている。

日米間では 2025 年4月以降、関税をめぐり複数回の閣僚協議が行われている。わが国は農産品輸入拡大や対米投資拡大を交渉材料に、自動車・鉄鋼・アルミニウムを含めたすべての追加関税の撤廃を求めている。一方、米国側の狙いは関税を用いた貿易赤字の削減であり、交渉の目線は必ずしも一致していない。また、関税交渉に先立ち、トランプ大統領は、安全保障が交渉に含まれる旨を表明している。石破茂首相は関税と安全保障の協議の分離を主張しているが、米国は日本に対して防衛費の一層の増額を要求してくるとみられ、日本は難しい状況に置かれている。


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