リサーチ・アイ No.2025-028 米国の個人消費の足かせとなる学生ローン ― 個人消費は最大▲0.4%ポイント下振れ、低所得層への影響大 ― 2025年05月23日 森田一至米国では、学生ローンを巡る家計の金融環境が悪化。以下2点が低所得層を中心に個人消費の足かせに。第一に、学生ローンの差し押さえに伴う可処分所得の減少。トランプ政権は、債務不履行となった学生ローンについて、債務者の所得差し押さえを開始すると発表。米教育省によると、すでにデフォルト状態にある530万人に加え、夏ごろまでにデフォルト状態に陥ることが予想される400万人について、可処分所得の最大15%が差し押さえ対象に。第二に、債務膨張に伴う信用状況の悪化。バイデン政権によって2023年に導入された、学生ローン滞納の信用情報への記載を一年間猶予する「オン・ランプ返済プログラム」は24年10月に終了。これを受けて、25年1~3月期の家計の延滞債務残高は急増。こうした信用環境の引き締まりが、財政状況の脆弱な低所得層を中心に消費を下押しする見込み。学生ローンの差し押さえが消費に及ぼす影響を試算すると、すでにデフォルト状態にある債務者の可処分所得が差し押さえられた場合、所得が年間で約580億ドル減少し、個人消費を▲0.2%ポイントほど下押し。仮に、追加の400万人もデフォルトに陥った場合、所得の減少幅は1,010億ドルまで膨らみ、個人消費の下押し幅は▲0.4%ポイントに拡大する恐れ。所得階層別にみると、低所得層において所得の下押し幅が大きくなっており、支出抑制の動きが強まる見込み。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)