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Economist Column No.2025-011

いまこそCPTPPの強化を~事務局の日本設置等を検討すべき

2025年05月12日 石川智久


■世界関税戦争のなか、注目が高まるCPTPP
米国も中国も保護主義の傾向を強めるなか、各国でそれに対応する動きが加速しつつある。わが国も、米国・中国との関係は大事にしながらも、貿易の多角化を急ぐことが求められている。わが国は、これまで様々な国と経済連携協定を結んできたが、発行済・署名済の国との貿易が総額に占める割合は、2024年には79%にまで高まっており、10年間で約+60%Pとなっている。今後も、多くの国々とこうした連携協定の強化が必要である。
その中でも注目されるのが、CPTPPである。2018年12月に発効したCPTPP加盟国との貿易総額は、2014年の25兆円から2024年の39兆円へと10年間で約1.6倍に増加し、日本全体の貿易総額に占める割合は同期間に16%から18%へ上昇している。経済連携の枠組みが貿易振興に寄与した好事例の一つといえる。

■CPTPPの事務局機能強化が喫緊の課題、日本が先導を
CPTPPは、関税の撤廃や引き下げだけでなく、サービス貿易、知的財産、投資なども含む包括的なものである。TPP加盟国が世界のGDPに占める割合は約15%と、巨大な経済圏として存在感を発揮しつつある。また、自由貿易を旨とするものであり、これを推進することは自由貿易のリーダーとしての地位を確保することができる。
一方で課題もある。まず、CPTPPの事務局はまだ設置されておらず、現在は議長国が持ち回りで対応している。このような状況では、実務遂行力に問題が生じる懸念がある。これまでCPTPPをリードしてきたのはわが国であり、わが国にCPTPPの事務局を設置することは、検討に値しよう。そのうえで、CPTPPの内容のさらなる高度化を急ぐ必要がある。CPTPPは2018年12月に発効したが、それから6年余り経過し、足元の環境変化に合わせて改訂を行うべき部分もみられる。具体的には、デジタル化に対応したデータの自由流通や、大国から経済的威圧を受けた加盟国への支援制度等が考えられる。

■TPP加盟国の拡大を
昨年12月には英国がCPTPPに加盟したことで、この枠組みは環太平洋にとどまらず、地球規模に広がりつつある。実際、中国、台湾、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイ、ウクライナ、インドネシアが加盟を申請済みであり、そのうちコスタリカは昨年11月から加盟交渉に入っている。昨今、世界の政治・経済情勢が大きく変化するなか、今後も加盟希望国は増えることが予想される。迎える側としては、EU諸国等の先進国だけでなく、成長著しいグローバルサウス諸国にも加盟を促していくべきである。
米国トランプ政権発足後の世界的混乱のなかで、各国は安心して貿易できる体制を求めており、CPTPPはその一つの回答となりうる。わが国としては、CPTPPの拡大を通じて、自国の信条を守り、お互いの国益に資する他国との経済関係を広げていくことが重要である。



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