リサーチ・アイ No.2025-021 米政権はマーケットを注視、ドル安誘導は実現困難―相互関税公表以降ドル全面安も、大幅なドル安進行は見込み薄― 2025年05月08日 吉田剛士トランプ大統領の就任以降、為替相場はドル安基調で推移。金融市場が混乱するショック時にはドル高が進行しやすいが、今回の相互関税発動後は、先進国通貨に加えて、一部新興国通貨に対してもドルが下落。さらに、米国債価格とドルはともに下落し、ドル円相場と米日金利差の関係は希薄化。こうした為替相場の動きは、ドル高の是正を主張するトランプ大統領の意向に沿っているものの、今後は、これ以上のドル安誘導は難しい状況。背景として以下の2点が指摘可能。第1に、ドル高是正の有効な手立てがないこと。プラザ合意では、ドル高是正のため各国が協調介入を実施したものの、現状ではドル安を望む国は少なく、G7の足並みが揃っていない状況。さらに、プラザ合意時点と比較して現在の為替取引量は膨大であり、介入の効果は限定的となる可能性。加えて、米政権は米金利上昇を避けるため、米債売りを伴うドル売り介入を求める公算は小。第2に、米政府による極端な政策の撤回。米政権は金融市場の動向を注視する姿勢を強めており、市場の混乱をもたらす政策は修正する構え。トランプ大統領の関税政策やパウエルFRB議長の解任を求める発言は、投資家の米債売りを受けて修正・撤回された経緯あり。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)