リサーチ・フォーカス No.2025-007 トランプ政策で高まる原油価格のボラティリティ ― わが国景気を下押しも ― 2025年05月08日 栂野裕貴米国トランプ政権の政策が原油価格に及ぼす影響は、総じてみれば中立的である。トランプ大統領は、米国内の原油生産を促す政策を打ち出してきたものの、操業コストの上昇、増産余力の低下、設備投資の減少などから大幅な増産が実現する可能性は低い。供給が伸び悩む一方、戦略石油備蓄の補充が米国内の石油需要を押し上げる公算が大きい。米国以外の石油需給については、トランプ関税が世界需要を下押しするものの、イランやベネズエラに対する制裁強化が世界供給をそれ以上に減少させるとみられる。ただし、トランプ政権の政策運営やそれに対する各国の反応次第では、原油価格はボラティリティを高め、急落と急騰を繰り返すリスクがある。具体的には、貿易戦争のさらなる激化や石油輸出国機構(OPEC)による大幅な増産が価格を急落させる一方、ロシア制裁の強化や中東情勢の緊迫化は価格を急騰させる要因となる。原油価格が乱高下すると、先行き不透明感を背景にした設備投資の手控えなどを通じて、わが国景気にもマイナス影響が生じる。こうした悪影響を低減するためには、わが国の石油需要を段階的に抑制し、原油価格の動向に左右されない経済構造への転換を進めていくことが求められる。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)