JRIレビュー Vol.5,No.123 人口減少時代における地方財政制度改革の選択肢 2025年04月15日 河村小百合物価高・金利上昇局面に入った今、わが国全体の財政運営は極めて厳しい局面に立たされている。国の財政制度全体のなかで地方財政は、国債費を別にすれば社会保障に次ぐ規模を占めている。地方財政についても、聖域なき改革の対象から外すことはできない。わが国においては、歳出面では地方の方が国よりも多くの役割を担っているにもかかわらず、税源は国に多く配分されている。地方の側のそうした財源不足を埋めるため、国から、歳入の面では①地方交付税と②地方譲与税によって、また歳出の面では③国庫支出金等によって、財源を地方の側に移転している。今後、地方財政制度を改革していくうえでは、複数の選択肢があり得る。まず、地方交付税制度に関しては、その配分の基礎となる「基準財政需要額」(各自治体ごとに必要な金額を総務省が判定)を、「人口」および「面積」に一定割合で比例するシンプルなルールに基づいて決定する仕組みに改革するアプローチがあり得る。また、地方交付税の配分のもう一つの基礎である「基準財政収入額」に関して、現状は“東京都一人勝ち”状態にある。この点を是正すべく、都道府県税である法人事業税を国税に振り替えてその全額を地方交付税の原資に加えるという試算を行ったところ、東京都も地方交付税の交付団体に転落することがわかった。そうなれば、東京都の“大盤振る舞い”分の財源を他の道府県の財政運営に回すことができ、企業側の負担増なき改革が可能となる。このほか、国庫支出金のカットも地方財政制度改革の選択肢とはなり得るが、社会保障や教育といった住民の生活にかかわる分野での国の側の負担が減らされることになってしまう。他方、「ふるさと納税」制度は、“国が認めた課税逃れ”にほかならず、同制度を正すことができれば、7,000億円規模の地方税収を回復できることになる。究極的には、中央政府の権能は必要最小限の分野にとどめ、それ以外の分野に関しては国の権限と財源を大幅に州政府に移す“道州制”ないし“連邦制”も選択肢となり得る。今後、国全体の財政制約が相当に厳しくなるなかで、各地方の優先順位の判断が尊重されるそうした改革は検討に値する。国全体の財政運営、および地方財政運営の厳しい現実を、私たち一人ひとりが理解し、厳しい人口減少時代に見合った地方財政制度に改革していくことが求められている。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)