コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

JRIレビュー Vol.6, No.124

労働時間を増やしたい人の希望を実現するために

2025年04月21日 井上恵理菜


日本では、子どもを持つ夫婦の労働時間は短い人と長い人に二極化する傾向があり、その中間の週30時間程度で働く人が少ない。一方、実際の労働時間と希望の労働時間を比較すると、週30時間程度で働くことを希望する人は実際に働いている人よりも多い。現状、長時間労働と短時間労働の両極端に偏りがちであるが、今後は、労使双方の生産性向上努力と並行して、労働者が希望する労働時間で働ける状況に変化させることが望ましい。本稿では、とくに働き盛りの男女の労働時間に着目して、あるべき方策を探る。

現在、働く時間の短い女性には、労働時間を増やしたいと考えている人が多い。彼女らの希望に沿って労働時間を増やせるような環境を整えることは、労働力不足を緩和させるための一つの解である。有配偶女性が労働時間を増やせない背景には、①税・社会保障をはじめとした社会制度による制約、②会社の勤務制度による制約、③家庭とのバランスによる制約、の三つの制約が指摘できる。

これらの制約を解消するためには、①労働時間に対して中立な税・社会保障制度に改変すること、②労働時間を選択できるように会社の勤務体系を変えること、③男性の長時間労働を減らし、男性の家事・育児時間を増やすこと、の三つの施策が必要となる。

②について、労働時間には労働者の置かれた状況に応じた複数の選択肢があることが望ましいが、まずはその一歩として、企業に労働時間の短縮の一形態について就業規則への記載を義務付け、3歳未満の子どもを持つ人に限らず、様々な事情を抱える人が週30時間程度の労働時間を選択しやすいようにすることが求められる。

当面は、現在の家庭の状況や人手不足への対応などを勘案しながら、労働者が希望する働き方を選択できるように上記の三つの施策を追求していくことが求められるが、より長期的には、男女間での家事や育児の負担がより均等となり、働き方の男女差が小さくなるよう、性別役割分業意識の見直しにも取り組む必要があろう。


(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ