① 差別のないこと 子どもまたはその保護者の、人種・肌の色・性別・言語・宗教・政治的意見・出身・財産・心身障害・出生の地位等にかかわらず、教育を受ける機会が与えられているかと言えば、いまだ課題はある。親の財力による格差はその一つである。 まず、共通テストには検定料(3教科以上18,000円、2教科以下12,000円)を支払う必要がある。東日本大震災の被災者向けに限定して免除措置が取られたことがあるが、恒久的ではない。 次に大学別に実施される二次試験(前期試験、後期試験)あるいは学校推薦等の試験においては、国立大の場合1回17,000円である。仮に同じ大学に3回出願したとしても、3回分の検定料が必要である。前期試験は主に2月25日、後期試験は3月12日だが、両者の出願期間は同じ2月初旬であるため、仮に前期に合格して(発表は3月7日)後期を受験しない場合でも、出願していれば検定料は返還されない。 受験生が出願すれば、大学側には受理コストが発生するため、検定料が返還されないことには一理がある。しかし、「出願→試験→発表」の日程を見直し、前期の結果が確定した後に後期の出願を行うことについては検討の余地があるはずだ。インターネット出願により印刷事務や郵送コストを大幅に受験生側に移している以上、大学側は浮いたコストを子ども(受験生)の利益のために投じるべきである。
② 子どもにとって最もよいこと 子どもにとって最もよいこととは、子どもに関係のあることを大人側が行う場合には、子どもの最善の利益を考慮すべき、という意味である。 少子化の進展とともに各大学は受験生集めを熱心に行うが、発信する情報をもとに居住地から遠方の大学を希望する子どもにとっては、受験のための移動や宿泊も大きな負担になってくる。二次試験の実施時期は大学の学期中でもあることから、宿泊に学生寮を使うことはできず、宿泊施設を自ら探す必要がある。 国公立大学でも一部では、試験会場を現地以外に設けることはあるが、私大に比べるとほとんどゼロに等しい。それも含めた選択だと割り切るとしても、18歳が初めて1人でホテルに泊まるケースも想定でき、安全面でホテルと大学が連携するなどの取り組みがあってもよい。実際に、面接時間が大幅に延びたために、当日中に帰宅することができず、やむなく自力で連泊した高校生もいる。 子どもの最善の利益には様々な側面が考えられるが、熱心に募集するなら、魅力を感じてやって来る子どもの安全確保までを想像するのは大人の1つの責任である。
③ 命を守られ成長できること 原則の3つ目では、医療、福祉、教育などのサービスを享受できることが想定されている。大学の存在が子どもの発達に寄与することを前提として、大学入試のプロセスが、果たして子どもの成長・発達に貢献しているかを考えると、「負の影響」も無視できない。というのは、日本の教育システムは、国連子どもの権利委員会からも「過度に競争的」と指摘されている。出願してから受験するまでの数か月間だけのことではなく、早ければ小学生の頃から特定の大学や学部を目指せと教えられて育つ子どももいる。幼い頃から同じ学年の子は友人というよりもライバルと扱ってしまい人間関係をうまく築けなかったり、成績が伸びないことがストレスになったり、勉強時間が長時間になって視力を低下させたりするなど、場合によっては「合格」という報酬対比、大きすぎる代償が生まれることもある。海外の例と安易に比較すべきではないが、「大学には入りやすいが、出にくい」というスタイルの国もある。今後、少子化がさらに進む日本においては、昔のように「成績でふるいにかける」必要が薄れ、全体を底上げすることの意義が高まる。現時点では様々な種類の推薦入試がでてきており試行錯誤段階ともいえる。個人レベルに加え社会全体でみた「発達」を意識する必要がある。