ビューポイント No.2024-041 「OTC類似薬」議論のポイント 2025年03月04日 成瀬道紀少数与党の国会のもと、日本維新の会がOTC類似薬の保険適用除外を主張し、自民党がそれに応じて政党間の協議体設置の方向で調整するなか、OTC類似薬への注目が高まっている。もっとも、OTC類似薬はその定義が必ずしも共有されていないうえ、①保険適用の是非と、②処方箋の要否が混同して議論されがちであり、関係者の間で議論がかみ合っていないようにみえる。①と②がセットだという先入観が持たれがちであるが、実際には、独立して決定できる。①保険適用の是非の本来的な基準は医療へのアクセスの観点からの必要性であり、所管する法律は健康保険法である。一方、②処方箋の要否の本来的な基準はリスクの高低であり、所管する法律は薬機法である。①については、今後政党間の協議体などにより、具体的な品目が精査されるとみられ、議論を深める時間的余裕がある。他方、②は、従来法律上は処方箋が不要であったOTC類似薬に対して、やむを得ない場合を除き処方箋を必要と定める薬機法改正法案がすでに今通常国会に提出されている。世間の注目はどちらかと言えば①に向かっているものの、事態が差し迫っているのは②への対応である。そもそもOTC類似薬はリスクが低く、処方箋を必要とする合理的理由は見出し難い。しかも、現在のOTC医薬品は、OTC類似薬と比べて価格が高い、有効成分の含有量が少なく効能が低い傾向があるなどの課題があり、OTC医薬品だけに限るとセルフメディケーションを希望する患者に対して薬剤師が最適な提案をするのが困難な状況にある。こうしたなかで、OTC類似薬の販売に処方箋を求める規制は、薬剤師の職能発揮と患者の利便性を著しく阻害する。セルフメディケーションを推進する方向で、OTC類似薬の在り方についてこれから本格的に議論を深めようとするタイミングで、それに逆行するような法改正を行うのは明らかに矛盾している。以上より、薬機法改正法案から、OTC類似薬に処方箋を求める変更の部分は削除されるべきであろう。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)