リサーチ・フォーカス No.2024-066 大阪・関西万博の費用対効果を考える ~真に追求すべき効果は非金銭的な価値にあり~ 2025年03月03日 若林厚仁2025年4月より開催される大阪・関西万博(以下、万博)は、日本政府が主催する一大国際イベントとして期待が高まる一方で、当初想定から費用が大きく上振れするなど、費用対効果の面から批判的な声も上がっている。万博に直接関係する費用である、会場建設費、運営費、基盤整備費などを積み上げると、費用総額は約7,600億円に達する。これに対し、チケット・グッズ等の売り上げ計画は1,160億円にとどまり、不足分は国や大阪府市の税金、経済界やパビリオン出展者の拠出金で賄われる。3,000億円程度の税金が投入されることを踏まえると、その費用対効果については議論を継続的に深める必要がある。万博の経済波及効果は約2.9兆円と試算されているものの、経済波及効果と費用は表裏一体であり、費用をかけた分だけその効果は大きくなる。また、経済波及効果は生産額を足し合わせたフローの数字であり、資本のストックを表すものではないが、閉幕後の会場は原則更地に戻す必要がある万博の特殊性も、費用対効果の議論を難しくしている。加えて、大阪・関西地域だけを見ると費用対効果は大きいものの、その他の地域における経済的な恩恵は限定的であることも、他地域での事前の盛り上がりに欠ける一因になっていると思われる。もっとも、金銭的な尺度で計りやすい短期的・直接的な価値ばかりに注目していると、万博がもたらす非金銭的な価値の大きさを過小評価してしまう恐れがある。具体的には、①各国・企業など出展者のSDGs 対応とブランド価値向上、②次世代を担う人材の科学技術に対する知的好奇心の向上、③大阪・関西発の東京一極集中の是正と地方創生の推進、などが挙げられる。GDPや経済波及効果は財貨・サービスの生産量を市場価格で捉えたものであり、万博が掲げる社会的課題の解決やSDGsの達成により生み出される経済厚生を測定することはできない。万博の真の費用対効果を考えるには、金銭で表せる短期的・直接的な価値だけではなく、次世代に残す長期的・間接的な価値についても考慮する必要がある。関係者・来訪者が開催期間にとどまらず、将来にかけてそれをどのように極大化するかを考えていけるかどうかが、後世における万博の評価を左右することとなろう。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)