JRIレビュー Vol.2,No.120
【 2024年シンポジウム 脱炭素社会への「公正な移行」に向けた企業の役割】
クロージング
2025年02月19日 翁百合
日本総合研究所主催シンポジウム 2024 年 9 月17 日 経団連会館、YouTube 同時開催
ただいまご紹介いただきました翁でございます。本日のシンポジウムのクロージングにあたり、一言ご挨拶させていただきます。
本日は、多くの方に会場にお越しいただき、また、オンラインでもご視聴いただきまして、誠にありがとうございました。お忙しいところ、パネリストの皆様には大変貴重なお話を聞かせていただきまして、厚くお礼申し上げます。
山下長官からもご紹介がありましたが、ここ数年、日本では社会課題解決をむしろ成長の機会とするという考え方で成長戦略を推進してきたと思います。本日のテーマであるGXは、まさに私たちが気候変動で日々実感しているように、人類が直面する最大の共通する社会課題の一つであり、これへの対応の重要性は、今月末、政権が変わりましても普遍であると思いますし、不可逆的な流れであると思っております。
もちろん、GXは産業構造や社会システム全般を大きく変えるもので、そのための「公正な移行」は、企業のそれぞれにとっては、ビジネスモデルの変化や従業員の移動や育成など、なかなか困難な課題が多いと思いますが、本日は、しっかりと日本の直面する現実に目を向けて、むしろ、移行をポジティブに捉えて歩みを進めるべきというお話をいただけたと思います。
本日は、経済界、学界、そして官界から、このテーマを語っていただくにはベストの皆様をお招きできましたが、本当にすばらしいご議論を展開していただきまして、ありがとうございました。
私自身は、「公正な移行」について、国、企業、労働者の社会的な対話の重要性、長期の予見可能性の重要性などを高村先生からご指摘いただいたことや、小堀会長からは、まさにキーワードである「線」と「面」と「時間」という視点で、総合的に、むしろ日本が率先して取り組む重要性、それから、山下長官の中小企業やスタートアップも含めてサプライチェーン全体で競争力を図るという視点が大事だという点が大変印象的でございました。ディスカッションでも、企業間連携、東海地域の具体例を高村先生に出していただきましたけれども、そういった企業間や地域での連携や、また、専門人材の育成、開示を通じた資本市場や金融の役割、そして、地域のリソースを踏まえた地方創生の在り方、国際的なルールメーキングの重要性なども大変示唆的だと思いました。
皆様のお話を伺いまして、各企業がむしろイノベーティブにこの問題を解決していくことが大事であることや、また、政府・自治体が企業、労働組合、金融機関などとも連携しまして、しっかりとこれに取り組んでいく重要性、まさに総合的な取り組みが大事だということを実感いたしました。
北欧では、社会全体として産業転換に伴う人への投資と移動を促しながら、働く人のウェルフェアと競争力を両立するという、積極的労働市場政策がずっと推進されてきていて、生産性の向上と働く人のウェルフェアを両立してきているわけですが、日本の未来の発展のためには、今後は、産業政策だけでなく、競争政策や労働政策なども有機的に連携させて、総合力でこの問題に対応していく必要性があると思っております。また、国と地方自治体がともに主体的に長期の視点に立って戦略的に「公正な移行」を進めていく重要性も分かりまして、ぜひこれを期待していきたいと思っております。山下長官や小堀様、そして高村先生も、ぜひこの分野でのリーダーシップを、今後もとっていただければと思っております。
私ども日本総合研究所といたしましても、この問題にはかねてから関心を持っておりまして、社会実装を含めて幅広く取り組んできております。今後も、本日のシンポジウムの成果も広めて、さらにこれを発信したり、取り組みを加速化させて、次世代のために様々な形で貢献してまいりたいと思っております。
本日のシンポジウムが、この問題に取り組んでおられる企業や金融機関、自治体をはじめとする関係者の方々、この分野に関心のある方々の理解を深めるヒントになっていましたら、主催者として大変うれしく思います。
本日は、本当にすばらしいパネリストの皆様に改めて感謝いたしますとともに、本日、シンポジウムにご参加いただきました皆様にお礼を申し上げて、私の最後のクロージングとさせていただきます。どうもありがとうございました。(了)
(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)