リサーチ・アイ No.2024-101 阪神・淡路大震災後の兵庫県経済の歩み 2025年02月10日 西浦瑞穂1995年1月に発生した阪神・淡路大震災から30年を経た兵庫県経済の歩みを振り返ると、震災後の復興特需が剥落した後は、全国に比べてやや緩慢な成長ペースに。兵庫県の県内総生産の全国シェアは、1993年度の4.2%から2021年度には3.9%へ低下。成長ペースが相対的に緩やかにとどまった背景には、震災を機とする生産拠点の移転といった直接的な要因だけでなく、震災前からの兵庫県の産業構造に起因する面も。この時期、アジアが世界の生産拠点として急成長するなか、生産拠点の海外移転や輸入品との競合激化などを背景に、全国に比べ製造業のウェイトが高い兵庫県には負の影響が大きく及ぶ格好に。また、震災以降、神戸港の対外的な地位が大きく低下。震災後に釜山港などに貨物が移ったことに加え、世界的な貨物量の増大を受けた船舶の巨大化への対応に遅れたこと、中国の港湾整備が急速に進展したことなども影響。こうしたことに加えて、新産業の育成が遅れたことが、震災後の緩慢な成長ペースの背景に。実際、1990年代半ば以降の労働生産性成長率を都道府県別に比較すると、兵庫県は資本装備率やTFPの寄与度が相対的に劣位。産官学の連携の推進、イノベーションの実現を支える設備投資への助成制度の利用促進などを通じて、革新的な技術・製品開発の一層の活発化を企業に促すことが重要。一方、兵庫県経済の活性化につながり得る新たな動きもみられる状況。神戸市での医療産業機関の集積や、世界水準の科学技術基盤の整備、AI活用の支援拠点の開設など、先端的な科学技術やデジタル技術への近接性が企業立地の魅力を高めると期待。神戸港では拡張整備が進むほか、水素など次世代エネルギーの貯蔵・輸送のインフラ整備が進展。インバウンド需要拡大を背景とした兵庫県全域における観光産業拡大なども経済活性化への重要な機会に。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)