リサーチ・アイ No.2024-096 中国の経済成長率目標、2025年も+5%前後に設定へ ― 財政出動規模と内需拡大策が目標達成のカギ ― 2025年01月27日 呉子婧3月5日から開幕する中国全国人民代表大会(全人代)では、2025年の経済成長率目標が前年並みの+5%前後に設定される見通し。現時点で公表されている地方政府の成長率目標は+5~6%とばらつきがあるものの、地域別名目GDPを用いた加重平均は+5.3%と、前年(+5.4%)と同程度と、地方政府は景気に対して概ね強気な見方。もっとも、今後の景気は、不動産不況と消費低迷に起因する内需の不振に加え、トランプ関税による輸出下押しが強まる見込み。これを踏まえると、全人代での追加的な経済対策が必要となるが、以下の事情から十分な規模と内容にはならず、2025年成長率の着地は目標未達となる公算大。第一に、財政出動の規模が不十分とみられること。報道によれば、昨年12月の中央経済工作会議にて財政赤字目標は対GDP比4.0%(2024年:3.0%)で合意。中央政府の特別国債の発行規模は2兆元以上(同:1兆元)、地方特別債の発行枠は約4.7兆元(同:3.9兆元)と、昨年よりも拡大する見込み。ただし、支出拡大(GDP比2.8%)のうち、景気に直接影響を及ぼすインフラ投資や消費刺激策の割合は半分以下にとどまる見込み。米国が対中関税を60%に引き上げた場合の悪影響(当社推計:中国の成長率▲1%ポイント下押し)を一定程度相殺するものの、内需の本格反転には不十分。第二に、実効ある需要喚起策の困難さ。足元にかけて、消費者センチメントは悪化しており、デフレ圧力も増大。これを跳ね返すには、すでに実施済みの消費財の買い替え促進策以外にも強力な消費喚起策が必要。大規模な現金給付などがその候補になるが、これまで貧困層向けを除けば現金給付策は実施されたことはなく、今後も採用されない公算大。不動産市場でも、記録的水準に積みあがった住宅在庫の処理は、相当大規模な需要喚起策を実施しない限り、進捗は期待薄。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)