JRIレビュー Vol.8,No.119 中堅企業に対する政府支援の在り方 2025年01月09日 村瀬拓人政府による既存の企業支援制度は、企業を大企業と中小企業の二つに分け、中小企業に手厚い支援を行っており、中堅企業は大企業と一括りにされ支援の対象外になることが多い。政府は、こうした中小企業中心の支援の在り方を見直し、中堅企業に対する支援制度の整備に取り組み始めている。新たに支援制度を整備する中堅企業の範囲は、中小企業に該当しない従業員2,000人以下の企業と法的に定められた。この定義に該当する企業は、国内企業全体の0.3%に過ぎないものの、従業者数では全体の1割近くを占めるなど、日本経済に一定の影響力を有している。これまでのところ、政府が講じた支援策は、中堅企業と中小企業を同列に扱い支援を行う制度が中心である。中小企業と中堅企業で支援要件が異なる施策や、中堅企業に特化した支援策は一部にとどまっている。中堅企業は、大企業に比べれば生産性が低く、投資資金や人材の獲得力も劣るため、政府による成長支援が、事業拡大や生産性向上のきっかけになる可能性はある。しかしながら、中堅企業に対する支援制度を整備する理由として、中堅企業を中小企業と同じように、大企業より生産性が低いものの地方経済において重要な役割を担う存在、とみなすことには疑問が残る。中堅企業の生産性は中小企業の1.5倍あり、地方の雇用に占めるウエートは1割に満たないことから、中堅企業を中小企業と一括りに支援しても、生産性向上や地方経済への波及効果が十分に得られず、むしろ成長意欲や新陳代謝を阻害するといった企業支援の弊害ばかりが目立つ結果になりかねない。中堅企業の成長を促し、生産性を高めるには、中堅企業にとって重要な経営課題に焦点を当てた支援策が必要となる。具体的には、①事業の拡大に向けた人員の確保、②すでに海外に進出している企業を含む海外での販路拡大、③研究開発の規模拡大、などを支援する取り組みが求められる。支援の実効性を高めるだけでなく、同時に企業支援の弊害を軽減する視点を持つことも重要である。そのためには、国が認定する特定中堅企業者の枠組みなどを利用しながら、成長意欲の高い中堅企業に的を絞って支援を提供する必要がある。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)