JRIレビュー Vol.1,No.119 欧州経済見通し 2024年12月25日 松田健太郎、朱雀愛海足元の欧州経済は緩やかに持ち直している。インフレ圧力の緩和で家計の購買力が回復しており、それに伴うサービス業の業況改善が景気をけん引している。一方で、製造業の低迷が長期化している。とりわけ、ドイツの製造業が構造問題を背景に深刻な不振に陥っている。その背景として、①主要輸出先の中国で内需が低迷していること、②各種コスト高などにより対外的な競争力が低下していること、③緊縮財政により公需が減少していること、などが挙げられる。先行きの欧州経済は、緩やかな回復に向かうと見込まれる。エネルギーや財価格を中心とするインフレ圧力の緩和、それを受けた実質所得の回復が続くなかで、個人消費が引き続き緩やかに持ち直す見込みである。欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行(BOE)の利下げも、内需の押し上げに寄与すると考えられる。もっとも、ドイツを中心に製造業の不振は当面続く可能性が高く、サービス業頼みの景気展開になる公算が大きい。実質GDP成長率は、2026年にかけて潜在成長率並みの1%台前半にとどまると予想する。メインシナリオに対するリスクは、政治・外交面の不安定化である。政治面では、右傾化による議会の機能不全や、移民排斥による労働力不足の深刻化が懸念される。フランスでは議会が混迷を極めていることから、財政再建を巡る先行き不透明感が強く、長期金利が急騰するリスクもある。加えて、米トランプ次期政権の経済政策が、輸出の下押し、財政の悪化、環境政策の停滞などを招くことを通じて、欧州景気全体に悪影響を及ぼす可能性がある点にも注意する必要がある。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)