リサーチ・フォーカス No.2024-053 内憂外患に苦慮するドイツ経済 ― 長期停滞が招く空洞化、ユーロ圏生産を下押しも ― 2024年12月09日 松田健太郎、朱雀 愛海ドイツ経済の回復が遅れている。足元で実質GDPはプラス成長に転じたものの、やや長い目でみるとコロナ禍前並みの水準で停滞している。とりわけ、主力産業である製造業の落ち込みが深刻で、企業の景況感も持ち直す兆しが見えない。ドイツ製造業が不振に陥っている背景として、主要輸出先である中国の内需が低迷していることが挙げられる。中国向け輸出は近年一貫して減少基調にあり、ドイツ製造業の減産圧力を強めている。加えて、エネルギーなど各種コスト高により対外的な競争力が大きく低下していることも生産活動を抑制している。構造的な下押し要因もドイツ経済の停滞を長期化させる可能性が高い。ドイツが従来優位にあった高付加価値な分野で中国が比較優位を確立したことで、貿易取引における中国との競争激化は避けられない。さらに、政府が緊縮的な財政スタンスを続けることも、インフラ整備を妨げ、経済成長の重石となりうる。このように、ドイツは産業立地の観点で競争力が著しく低下しており、国内の産業空洞化への懸念が高まっている。国内での減産や海外への移転を計画する企業も年々増加傾向にある。仮に、企業がドイツ国内から看過できない規模で流出し、製造業の生産が下押しされる場合、他のユーロ圏諸国にも相応の減産圧力が生じる点には注意が必要である。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)