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リサーチ・フォーカス No.2024-052

2023年の欧米銀行不安の検証を踏まえたわが国金融セクターの要対応事項

2024年12月06日 谷口栄治


2023 年の欧米における銀行不安(米中堅・中小行の連鎖破綻、スイス大手行のCreditSuisse の身売り等)を受けて、金融安定理事会(FSB)は、本年10 月、問題の背景や今後の留意点等に関する報告書を公表。同報告書では、一連の混乱の背景には、金利環境の急激な変化があったとしたうえで、主に、①高金利環境下で脆弱な金融業態、②デジタル化の進展を受けた預金者の行動変容、について検証。

高金利環境下のリスクについては、ソルベンシーリスク(保有債券の含み損、収益性の悪化等)と、流動性リスク(預金流出、調達コスト上昇等)の観点から、一部の銀行、生命保険、不動産ファンドの脆弱性を指摘。

デジタル化の進展を受けた預金者の行動変容については、今回の預金流出の規模が大きく、そのスピードも速かったとしたうえで、デジタルバンキングの普及等が預金流出のインパクトを強める「デジタル・バンクラン」のリスクを指摘。

以上を踏まえれば、わが国の金融当局や金融機関として、以下の3点が重要に。

① 経営環境(金利環境)の変化を踏まえたリスクの検証
わが国が「金利ある世界」に回帰するなか、金利リスクに対する脆弱性を精査する必要あり。とりわけ、満期保有目的債券の比率が高い金融機関では、リスクが見えにくくなっているため、金融当局としては、金融機関毎のバランスシートやリスク管理の実態を詳細に検証することが重要。

② デジタル・バンクランを含めた構造的な資金移動(流動性リスク)への対応
デジタルバンキングサービスの普及、ネットバンクの台頭により、預金の移動が迅速かつ容易になっているほか、ネット証券やキャッシュレス事業者など、銀行以外の業態への資金移動も進展。地域金融機関では、高齢化や人口減少に伴う預金流出のリスクも懸念されるなど、構造的な預金減少リスクに留意する必要。

③ 金融規制・監督に関する国際協調の重要性の再確認
前年の銀行不安を受けて、国際機関は、金融監督機能の強化を提起しているが、その実効性を高めるためには国際協調が不可欠。米国の政権交代により、国際協調の機運が低下する恐れがあるなか、本邦金融当局として、金融規制・監督の国際協調の重要性を強調し、適切な方向へ議論を導く必要あり。


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