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リサーチ・フォーカス No.2024-050

人口の東京一極集中の実相

2024年11月29日 藤波匠


東京圏の転入超過数は、コロナ禍の影響を受け大きく減少した状況を脱し、緩やかな増加傾向にある。しかし、転入する人口の年齢構成や転出元をみると、コロナ禍前とは異なる状況がみてとれる。

18~29 歳の新卒世代に限れば、2023 年の東京圏の転入超過数は、すでにコロナ禍前の状況を上回る。これは、東京圏に拠点を構える企業による新卒世代に対する採用意欲の強さを反映したものである。

また、東京圏に流入する人口の供給地として、地方大都市圏の割合が高まっている。地方大都市圏を除く地方圏で、若い世代の人口減少などにより人口供給力に陰りが生じ始めていることが一因である。IT 人材など、高度人材を大都市間で奪い合う構図が鮮明となっており、その中で東京圏の吸引力が勝っている状況と言える。

男性に比べて女性の方が東京圏の転入超過数が多い状況は不変であるが、足元でその差は縮小傾向にある。この背景には、地方の若年女性人口の減少や東京圏における医療・福祉分野の雇用拡大の一服感、さらには情報通信業界の継続的な雇用拡大など、求人職種や産業構造の変化がある。

女性の流出が大きな課題となっていた地方圏にとっては、女性が地域にとどまる可能性の高まりは歓迎すべき動きと言えるかもしれない。しかし、わが国の経済成長を促す観点では、女性の理系人材や IT 人材を育成することは大きな課題である。ジェンダーギャップ解消の面からも、地方においてキャリア教育の充実や大学の学科再編などを通じて理系を志望する女性を増やすことが望まれる。

ただし、地方において、女性理系人材の受け皿をもうけないまま育成ばかりを進めれば、東京圏への女性の流出が再び加速しかねない。わが国の経済発展と高度人材の地域定着を両立するために、地方においても、理系人材や IT 人材の受け皿となる雇用の場を充実させていくことが必要である。7 割以上の IT 人材を東京圏の IT 企業が抱え込んでいる現状から脱却するには、地方に拠点を構える企業が、積極的に理系人材を採用することで、女性の地域定着を促すとともに、各企業の内発的な DX や研究開発を促進して地域経済を活性化していくことが必要である。

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