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JRIレビュー Vol.3,No.121

OTC 類似薬はOTC 医薬品に区分を-本質は医療用医薬品から処方箋医薬品への原点回帰-

2024年11月28日 成瀬道紀


本稿は、公的医療保険の給付費用抑制の鍵となるOTC類似薬をめぐる問題に焦点をあてる。医薬品は、医師の処方箋が必要なものとそうでないものすなわちOTC医薬品(市販薬)に大別される。処方箋の要否はリスクに基づき決定されるべきものであり、実際、諸外国では、政府がリスクの高い医薬品を処方箋が必要な医薬品に、低い医薬品をOTC医薬品に区分している。OTC類似薬という用語は、OTC医薬品と効果やリスクなど薬の性質が似ていながら、原則処方箋が求められる医薬品という意味で用いられる。

OTC類似薬と呼ばれる製品群が生じるのは、わが国の処方箋の要否を決める基準が処方箋医薬品と医療用医薬品のダブルスタンダードになっており、かつ、本来の基準とはいえない医療用医薬品の方がメインになっているためである。処方箋医薬品か否かはリスクの高低によって決まり、リスクの高い医薬品のみが処方箋医薬品に区分され、処方箋が必須とされる。もっとも、処方箋医薬品以外に区分されるリスクの低い医薬品であっても、わが国においては自動的に処方箋不要とはされず、メーカーの申請に基づき医療用医薬品に区分された場合は原則処方箋が求められ、公的医療保険の給付対象となる。わが国では現状、医療用医薬品以外の医薬品がOTC医薬品とされている。

OTC医薬品と性質が似ている医薬品が公的医療保険の給付対象となり、原則処方箋が求められる問題点として、主に4点指摘できる。一つ目は、セルフメディケーションの阻害である。患者は医療機関(病院・診療所)を受診しOTC類似薬を処方された方が、薬局でOTC医薬品を直接購入するよりも薬剤費の自己負担が小さくなる。すなわち、セルフメディケーションの方が割高になる。二つ目は、一つ目に伴う医療保険財政の圧迫である。本稿の試算では国民医療費45兆円のうちOTC類似薬は2.3%の1.0兆円にのぼる(2021年度)。三つ目は、医療保険制度の公正さを損なう。軽症でもすぐに医療機関を受診しOTC類似薬の給付を受ける人の薬剤費を、医療保険財政全体で負担する仕組みは、公正とはいえない。四つ目は、患者が薬局でOTC類似薬を直接購入しにくく、患者にとって不利益とみなせることである。とりわけ、OTC類似薬はOTC医薬品と比べて費用対効果に優れた医薬品が多い。

以上を踏まえ、医療用医薬品という区分は廃止し処方箋医薬品以外はOTC医薬品に区分すべきである。それにより、上述の諸問題の解決が期待される。他方、医師が公的医療保険の給付対象となる代替品を処方することによる薬剤費増、自己負担増による患者の医薬品へのアクセス悪化、医師の関与低下による不適正使用等の懸念も想定される。これらの懸念に対しては、医師の処方に対するモニタリングと指導、重篤な疾患で使用する際の例外的な保険給付措置、薬剤師による患者指導の徹底等により、対応可能と考えられる。


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