リサーチ・アイ No.2024-068 トランプ次期政権の環境・エネルギー政策とわが国に求められる対応 2024年11月07日 栂野裕貴11月5日に行われた米大統領選挙では、共和党のトランプ氏が勝利し、連邦議会選挙でも、上院は共和党が過半数を確保、下院も過半数確保の見通し。同氏の公約などを踏まえると、米国の環境・エネルギー政策は大幅に転換する可能性。主な政策変更は、以下の3点。第1に、国際連携からの離脱。トランプ氏はパリ協定から再離脱する姿勢。離脱期間が数ヵ月にとどまった前回と異なり、今回は短くても3年以上に。加えて、途上国の気候変動対応を支援する緑の気候基金への資金拠出も撤回する可能性。米国が国際連携から離脱することになれば、気候変動対応に関する国際的な合意形成が難航するほか、途上国支援全体が滞る恐れ。第2に、環境規制の緩和。自動車の環境規制が緩和されれば、電気自動車(EV)等の普及が遅れ、温室効果ガス(GHG)排出量が最も多い輸送部門の排出削減が停滞。加えて、トランプ氏は、化石燃料の増産に向けて、関連プロジェクトの承認を迅速化する姿勢。GHG排出対策が不十分な中小企業による化石燃料の採掘が増えて、採掘に伴う排出量が増加する可能性。第3に、インフレ抑制法(IRA)の修正。同法の全面的な撤廃は見込まれないものの、EV購入や再生可能エネルギー発電、蓄電池の導入に対する税控除などが縮小される可能性。今後、わが国政府は、こうした米国の政策動向を踏まえて国内の脱炭素戦略を機動的に見直すとともに、欧州等と連携して、世界的な脱炭素機運の醸成や途上国支援の強化にこれまで以上に貢献することが求められる。また、蓄電池・EV等の分野で米国に進出するわが国企業は多く、米国の政策動向に応じて、事業戦略や生産・販売計画などを見直す必要がある。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)