リサーチ・アイ No.2024-060
独VWの工場閉鎖検討で高まる雇用への懸念 ― 仮に2万人が解雇された場合、関連産業への波及で10万人近くが失業する恐れも ―
2024年10月17日 朱雀愛海、松田健太郎
独自動車メーカー・フォルクスワーゲン(VW)がコスト削減のため、国内工場の閉鎖を検討。背景には、ドイツの産業拠点として魅力の低減。
ドイツでは、ウクライナ戦争の影響でロシアからの天然ガス供給が激減したことから、代替調達を進めたものの、エネルギー価格は高止まり。非家庭向けのガス料金は2019年と比較して2倍近くに。加えて、人件費も大きく上昇し、これらのコスト上昇の影響を受けて価格競争力が低下。
今後も、欧州の自動車業界では中国車を中心に価格競争が続く公算が大きく、低コスト化を図る企業が海外生産を進める動きは変わらない見通し。足元でも、ドイツの海外直接投資は中国以外の国・地域向けで堅調に増加。EU加盟国が、中国からのバッテリー式電気自動車輸入に相殺関税を課すことを決定したものの、中国メーカーは生産コストが安い東欧での現地生産を拡大しており、欧州内での安価な中国車との競争は不可避。
ドイツ国内で30万人近くの従業員を抱えるVWは国内2ヵ所以上での工場閉鎖を検討しており、閉鎖の規模によっては、関連産業にも波及し、大規模な失業につながる恐れ。産業連関表分析によれば、仮に自動車産業で2万人の失業者が出た場合、自動車整備や、サプライヤー、ビジネスサービスなどへ影響し、10万人近くが失業する見込み。さらに、閉鎖工場の増加や他メーカーにも人員削減の動きが広がり、工場閉鎖規模が10万人となる場合、約40万人に上る雇用者に影響が出る見通し。
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