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リサーチ・フォーカス No.2024-038

株式決済期間短縮(T+1)に向けた動きとわが国の対応の方向性

2024年10月10日 谷口栄治


本年5月、米国にて、株式取引における決済期間(約定から決済までの期間)が、約定日から2営業日後(T+2)から翌営業日(T+1)に短縮。それを受けて、欧米やアジア・大洋州諸国でも株式決済期間短縮化に向けた検討が進展。

決済期間短縮によるメリットとしては、①未決済残高の削減による決済リスクの減少、②取引に係る証拠金負担の軽減とそれによる資金効率の改善、③決済事務の合理化・効率化による金融市場の魅力向上、が存在。

一方、決済期間の短縮化により、取引後の手続きや処理がタイトになることで、取引が履行されない「フェイル」のリスクが増加するほか、取引参加者の作業負担やコスト負担の増加、オペレーショナル・リスクの増大につながる恐れあり。

米国のT+1 移行を受けて、国際的に株式決済期間短縮化の機運が高まるなか、わが国でも、本年7月に公表された金融審議会の市場制度WG の報告書のなかで、国際標準から取り残されないために、T+1 化に向けた実務的な検討を始めるべきと提言。

今後、わが国でも市場関係者を中心に情報収集や具体的な検討が進むとみられるなか、その検討にあたっては、以下の3点が重要に。

① T+2 移行時の経験を踏まえたT+1 化に関する課題の洗い出し
決済期間短縮化にあたっては、フェイル・リスクや時差の大きい海外投資家の負担増等の課題を指摘する声あり。わが国では、2019 年にT+2 に移行したが、その際の議論や対策等を踏まえ、T+1 化に係る課題の洗い出しを行う必要あり。

② デジタル技術の進歩を踏まえたさらなる決済期間短縮化への備え
現時点では、さらなる決済期間の短縮(T+0)化には実務的な課題が多いが、将来的にはブロックチェーン技術の活用を通じて、世界的に決済プロセスの高度化がさらに進展する可能性。本邦当局としても、海外当局等との情報連携が重要に。

③ わが国株式市場の魅力向上
株式市場の国際競争力を高めるためには、決済期間短縮化に加え、取引時間の延長等、市場の機能性・利便性の向上に継続的に取り組む必要。加えて、コーポレートガバナンス改革等、本邦企業の企業価値向上に向けた取り組みも重要。


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