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リサーチ・フォーカス No.2024-036

ハリス氏の食品価格の規制案、副作用大 ― 関連企業の収益を圧迫、 供給不足によるインフレ再燃も―

2024年10月07日 松田健太郎


米国では、民主党のハリス候補が大統領選後の経済政策として、食品価格の抑制策を提示している。米国では州によって価格のつり上げを禁止する法律が制定されているが、ハリス氏は連邦法の制定を目指している。連邦政府が規制主体となることで、州レベルでは難しいグローバル企業への法適用も可能になると考えられる。

価格抑制策は、インフレで打撃を受ける中低所得層向けの支援を狙いとしている。米国では、食品価格がコロナ前から25%近く上昇しており、他の財以上に高騰している。低所得者層では、家計支出に占める食品の割合は3割超と群を抜いて高く、これらの層では価格抑制策の恩恵が大きい。

もっとも、価格抑制策は企業部門への副作用も大きい。ハリス氏は企業が不当な値上げで利益を搾取していると主張しているが、食品製造業や小売業の利益率はコロナ前水準並みにとどまり、過剰なマージンは発生していない。このもとで価格抑制策が採られると、コスト転嫁の制限などで収益が圧迫され、容量の縮小や品質の低下といった「ステルス値上げ」が生じるほか、雇用削減や倒産を招く可能性もある。価格抑制策が結果として家計のためにならない可能性には注意が必要である。

さらに、価格抑制策はインフレ抑制効果も見込みづらい。1970 年代のニクソン政権期にも価格抑制策が採られたが、価格高騰を抑えられず、最終的には価格上昇が容認された経緯がある。価格統制は企業の生産活動を縮小させ、供給不足が生じることが背景にある。価格抑制策はインフレの振れ幅を大きくしかねない点にも、注視する必要がある。


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