リサーチ・アイ No.2024-057
米銀の2024年上期決算にみる今後のリスクファクター ~ ネット金利収入の伸び悩みとリテールローン関連のクレジットコスト増に注意が必要 ~
2024年10月01日 内村 佳奈子
米連邦預金保険公社(FDIC)が公表した米銀の2024年4~6月期決算の集計値をみると、ネット金利収入が減少する一方、非金利収入が増加したことで、当期純利益は前年同期比+1%増とほぼ横ばい。上期では、ネット金利収入の減少や営業費用の増加等により同▲10%減。
米銀の上期決算は総じて堅調であったものの、今後を見通すうえで、以下2点が懸念材料。1つ目が、ネット金利収入の減少。2023年入り後から足元にかけて、運用金利の伸びが鈍化するなか、調達金利が運用金利を上回るペースで上昇し、利鞘は縮小基調。9月18日、FRBが4年半ぶりに政策金利の引き下げ(▲0.5%pt)を決定したなか、今後も継続的な利鞘縮小が見込まれ、米銀業績の下押し圧力に。
2つ目は、リテールローン関連の貸倒損失の増加。米国では、リテールローン残高が増加基調にある一方、コロナ禍で生じた過剰貯蓄の払底やインフレ率の高止まり等を受けて、クレジットカードを中心に延滞率が上昇。足元におけるクレジットカード関連の貸倒償却額は、ここ10年で最高の水準に。
米銀の収益性や健全性に大きな問題がある状況ではないものの、今後の金融リスクの観点からみれば、上記の通り、金融政策の転換やリテールローン関連のクレジットリスクには要注意。とりわけ、クレジットカード関連のクレジットリスクの増加は、個人消費の押し下げ要因になり得るほか、米景気の停滞、銀行の収益環境悪化につながる恐れもあることから、注視する必要あり。
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