ビューポイント No.2024-16 石破政権の地方創生策をどう見るか―産業競争力強化の観点から具体化を急ぐ必要― 2024年10月01日 石川智久新総理の石破氏は、かつて内閣府担当大臣(地方創生)を経験するなど、地方創生をライフワークとしてきた。その意味で、まさに看板政策といえるのが「地方創生」である。石破氏の地方創生に関する施策をみると、「新しい地方経済・生活環境創生本部」(仮称)を創設し、豊かでデジタルが行き届いた「デジタル地方文化都市」、観光産業のさらなる高度化・高付加価値化、グリーンツーリズム・ワーケーションのための制度を拡充などが示されている。また、東京一極集中を是正して、地方の持つ潜在力の最大化を目指し、地方への企業進出、地方における事業承継、スタートアップなどを後押しするためのインセンティブを整えることにも注力。また、地方創生の中に、食料安全保障という項目を設けており、その力点は、農林水産物の輸出拡大や、人手不足時代にも対応した儲かるスマート農林水産業の促進であり、保護主義というよりも産業競争力強化に主眼が置かれている。これまでわが国の地方創生では、各種給付金・補助金のような一時的なバラマキが目立つ傾向があり、産業政策という観点が弱かったと言える。こうしたなか、石破総理の公約は、全体的に産業競争力を高める方向に政策論が展開されており、方向性としては評価されよう。一方で、具体策はまだ明確ではない。早急に具体化を進めるべきであるが、その際、留意すべき点として以下の 3 点が指摘できる。(1) 中小企業対策と地方創生の連携:従業者総数をみると東京都以外の道府県では約 80%が中小企業勤務である一方、東京では約 40%が中小企業勤務であり、中小企業対策は地方ほど大きな効果が期待。またスタートアップの東京一極手中も是正すべき。(2) 地方部における観光業の強化:インバウンドは地方部では回復が遅れており、インバウンドの地方誘致が必要。さらに、日本人の国内旅行は安定成長市場であり、それを地方創生につなげることも重要。(3) 第一次産業強化を通じた地方創生と食料安全保障の両立:食料品輸出の政府目標が達成すれば農業県では域内総生産を年平均+0.3%押し上げると試算。農業輸出の促進は地方創生だけでなく、わが国全体の食料確保にもつながる一石二鳥の政策。また中山間地域の活性化のためには林業再生も重要。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)