RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.24,No.94
アフリカとの経済関係の深化を目指すインド
2024年09月13日 熊谷章太郎
インドは新興国の盟主になるという姿勢を強めている。この背景には、先進国主導の国際秩序に対するインドの不満の高まりがあり、インドは新興国との連携を深めることでグローバル・イシューにおける自国の発言力を高めようとしている。インドは新興国のなかでアフリカとの関係を特に重視しており、国際会議の開催などを通じて関係を深めようとしているが、各国から信頼を得られるか否かは貿易、投資、援助など、実体面で経済関係を深めていけるかにかかっている。
現在、インドのアフリカとの経済関係は、特定の国・分野に集中しており、アフリカにおけるインドのプレゼンスは中国と比べると限定的である。インドの主な輸出品目は、石油製品、輸送機械、医薬品であり、主要輸出先はナイジェリアや南アフリカなど経済規模が大きい国である。一方、主な輸入品目は原油、石炭、金、ダイヤモンドなどの鉱物資源であり、主要輸入先はこれらが豊富なナイジェリア、南アフリカ、アンゴラなどである。インドとアフリカ双方の経済成長を背景に、貿易額が中長期的に拡大する一方、直接投資や援助に目立った増加は見られない。中国の対外政策の見直しが進むなか、中国のアフリカ向け融資額や在アフリカ労働者数は近年急減しており、それを受けて印中間のプレゼンス格差は足元で縮小しつつある。
インドとアフリカの経済関係の先行きを展望する際に注目すべき点は、双方の経済成長とビジネス環境である。アフリカについてみると、人口増加、都市化の進展、資源輸出の拡大、アフリカ域内の経済統合などが経済成長のけん引役となる。しかし、各国がインフレと金融引き締めや政情不安などに伴う景気悪化のリスクを抱えていることに留意が必要である。また、インドがアフリカの経済成長を取り込んでいくためには、ビジネス環境の改善を通じた国際競争力の引き上げが必要になるが、モディ首相が率いるインド人民党の下院の議席が過半数を下回る状況下、賛否両論のある大胆な制度改革の断行は容易ではない。
インド・アフリカビジネスへの関心が高まるなか、日本は在印日系企業のアフリカ向け輸出拡大やアフリカ市場での日印企業の連携を促進しようとしている。しかし、インドとアフリカを取り巻く経済環境を踏まえると、インドからの輸出拡大や日印企業連携に先立ってインドのソフト・ハードインフラの整備やアフリカの平和と安定の定着などに向けた取り組みを支援していくことが求められる。
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