リサーチ・フォーカス No.2024-032 自治体DXの進捗状況―デジタル改革本格化後の自治体DXの現在地点を探るー 2024年09月12日 野村敦子新型コロナ禍を受けデジタル社会への移行が喫緊の課題となるなか、わが国の官民における DX への取り組みが本格化した。そのなかでも、国民にとって身近な公共サービスを提供する市区町村(基礎自治体)の DX はどこまで進んできたか。本稿では、基礎自治体の自治体 DX の現状を知るために、総務省の資料等を用いて、「自治体 DXの推進体制」、「行政サービスの向上・高度化への対応状況」、「行政サービス改善等の取り組み」、「行政手続きのオンライン化等」の4領域について、2021 年度と 2023 年度の間の進捗状況を、基礎自治体の人口規模別ならびに都道府県別に比較・検討を行った。その結果、全体として DX の取り組みは着実に進捗していることが確認できた。しかしながら、項目別、基礎自治体の人口規模別、ならびに都道府県別に DX 実施状況の詳細をみると、実施率が上位の団体と下位との間で差が広がるなど二極化の様相。CIOなど責任者の任命や職員の研修の実施、オンライン手続きに必要なシステムの導入など、DX の初期段階の取り組みは大きな差がないものの、人員・財政面、あるいは作業面で負担が生じる項目、専門的な技術や知識が必要とされる項目では差が大きい。人口規模別にみると、とくに町・村で遅れが目立つ。都道府県別で差が生じている要因としても、域内の基礎自治体のうち町・村の占める割合が高いところほど遅れていることが確認できた。なお、マイナンバーカードに関しては、自治体の人口規模や都道府県に関係なく普及が進んでおり、政府によるマイナポイントの付与などの普及促進策による効果が大きかったと考えられる。一方で、マイナンバーカードの普及と自治体 DX の進捗との間には相関関係は認められなかった。今後、自治体 DX をさらに推進し、国民がその恩恵を享受できるようにするためには、出遅れている地域・自治体をいかに後押し・底上げしていくかが大きな課題である。その観点から、上位団体である都道府県や、地域の中核となる都市による広域での協力・連携体制の強化が不可欠である。本稿のデータからも、進捗が芳しくない地域や自治体は明らかであることから、国においても、相談・助言・情報共有にとどまらず、本腰を入れた支援策を講じることが求められよう。なお、今後の自治体 DX の加速・深化に向けて、GovTech 企業との連携が不可欠になる。その先駆的な事例として、東京都が設立した「GovTech 東京」が注目される。こうした取り組みから得たノウハウを多くの自治体に広げていくことが重要である。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)