リサーチ・アイ No.2024-050 対中輸出の減少で懸念される製造業の業績悪化 ―対中輸出10%減で製造業の設備投資は▲1.1%減少― 2024年09月09日 後藤俊平わが国の対中輸出は低迷。中国向け輸出数量は2021年初をピークに減少傾向が続いており、2023年はコロナ禍前から2割近く水準を切り下げ。内訳をみると、金属や非金属鉱物などの素材や、輸送機械を中心とする機械製品がとりわけ減少。この背景として、以下の2点が指摘可能。第1に、中国における不動産投資の不振。住宅需要の急激な冷え込みなどを受けて、中国では不動産開発投資が足元で大幅に減少。この結果、建設用の金属・鋼材需要が減退。第2に、中国企業の競争力の向上。輸出面での比較優位の度合いを示す「貿易特化係数」のコロナ禍前後での変化をみると、化学や機械製品を中心に幅広い品目で競争力が向上し、中国国内での調達や内製化が進展。とりわけ、近年EV輸出が急拡大している輸送機械の上昇が顕著。対中輸出の減少は、企業収益の下押し要因に。試算では、中国向け輸出が10%減少すると、わが国製造業の経常利益は▲4.7%減少。とりわけ、売上に占める中国向け輸出の割合が大きい機械業種で影響が大きく、電気機械業では▲9.2%の減益圧力に。こうした企業収益の悪化が、設備投資に水を差す恐れ。試算では、中国向け輸出の10%減少で、製造業の設備投資は▲1.1%減少、電気機械業や一般機械業では▲1.6~1.7%の下押し圧力に。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)