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JRIレビュー Vol.8,No.119

限界集落における交通と電力の地域インフラのリニューアル

2024年08月26日 瀧口信一郎


2020年時点ですでに全国の4分の1のエリアが、人口に占める65歳以上の割合が50%を超える「限界集落」である。地方では、高齢化の進展とともに、90歳の高齢者も自動車を運転しないと生活していくことができない状況にある。コンパクトシティ化により限界集落から人を移すべきとの議論もあるが、水や木の資源が豊富にある山間地には、河川の管理やその周辺の包括的なインフラ維持のためにも住民が住み続けるべきである。したがって、町の中心部への移住を促すだけでなく、自然豊かな過疎地にも人が住み続けるための公共交通をいかに維持するかを考えなければならない。すでにこのような取組みは試行されつつあるが、地域の公共交通は収益を維持することが容易ではないという問題がある。

本稿では、収益性の問題を解決するため、過疎地の交通と電力を接続した新たなコミュニティ・インフラ事業モデルを提案したい。交通のネットワークを構成する駅や停留所を「結節点」とし、「結節点」に充放電設備、蓄電池ステーション機能を集積させるとともに、廃棄電力をEVや蓄電池に貯蔵する仕組みを整え、この「結節点」を電力の送配電ネットワークに接続するモデルである。地域の再生可能エネルギー資源を活用し、自治体、電力会社、自動車/電機関連メーカー、住民などのステークホルダーが連携して領域横断でインフラや労働力というリソースのシェアを行い、コストを抑制する。

この事業モデルは、人口減少と高齢化を所与として安定的で定常的な仕組みに軟着陸させるまで、事業の利益を創出しつつ、地域にとって意義のある社会システムとすることを目標とする。そのため、採算性を検証して収益性を改善し、コミュニティ・インフラ事業モデルを推進するMERON(Mobility& Energy infrastructure Return ON investment)指標を設定する。MERON指標は「地域の交通と電力のネットワークをどのように設計するか」「収益性をどう確保するか」「地域メリットのため政策支援はどうあるべきか」を考える基準になる。

実際にこのような事業を目指す動きも出てきている。過疎化が進む鳥取市佐治町では、鳥取市が公共交通を担うNPOさじ未来と協力して、住民の移動手段を支援し、佐治町を脱炭素先行地域に位置付け、小水力発電所の建設を予定している。この再生可能エネルギーの電力を活用して電力事業を起こし、交通インフラの強化につなげようとしている。

2023年度から経済産業省資源エネルギー庁により電力とEVのインフラを連携させるEVグリッド構築の検討が進められており、本モデルの大きな後押しとなる。ただし、供給発想だけでは地域の生活を支えるインフラは機能しないため、地域の交通を再構築することにより、地域の生活が維持され、さらには人々の交流により、豊かな生活が送られ、観光、産業、教育につながるモデルを具体化していくことが大切である。

(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)
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