リサーチ・フォーカス No.2024-024 米国サンディエゴ市に学ぶ地方公共団体の脱炭素施策 2024年08月06日 若林厚仁わが国地方公共団体(以下地公体)は、温室効果ガス削減に関する「地方公共団体実行計画」を策定することが求められているが、その中身は玉石混交である。地公体自身の削減計画である「事務状況編」を見ると、多くの中小規模地公体が政府目標を下回る保守的な削減目標を掲げているほか、進捗状況を点検・公表しておらず、住民をはじめとする外部からのチェック機能が働いていない地公体が多い。地公体の区域全体の削減計画である「区域施策編」についても、住民との対話が進まないなか、多額の予算や利害調整を必要とするような難易度の高い施策ではなく、環境教育などの啓蒙活動や補助金支給といった、比較的容易で反対意見の出にくい施策に偏りがちなのが実態である。一方、先進的な海外事例として米国サンディエゴ市のケースを確認すると、同市は市長のリーダーシップの下で「気候行動計画(CAP)」を策定し、2035 年の脱炭素達成に向けた各種施策を強力に推進している。同市CAPの特徴として、①温室効果ガスの削減対象・削減量・削減手段を明確化し、進捗をフォローしていること、②住民との対話、計画により享受できる恩恵の公平性を重視していること、③自治体内の部局のカベを越えた推進体制を整備し、推進に必要な予算・人員計画を策定していること、④サンディエゴ大学内の研究組織と連携し、実施コストなどの分析を委託していること、などが挙げられる。サンディエゴ市のケースのわが国地公体への示唆として、①行政や住民を動かすため、首長が脱炭素に力強くコミットすること、②予算・人員確保のためにも、他の地公体との連携を検討すること、③脱炭素に関する知識・知見を有する外部組織や専門家を有効活用すること、などが考えられる。同市のケースを参考に、行政主導で実効性の高い地域計画が策定・推進されることが期待される。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)