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リサーチ・レポート No.2024-005

Long-Term-Care(LTC)に関する費用統計の現状と課題 -「社会保障費用統計」における推計との比較を踏まえて-

2024年06月26日 西沢和彦


OECD などによって整備された SHA(A System of Health Accounts)は、健康に関する包括的な費用統計体系であるが、一般財団法人医療経済研究機構(IHEP)の手によるわが国の推計は残念ながら実用レベルに至っていない。本稿は、SHA のなかでも Long-Term-Care(LTC)に焦点を絞り、わが国の推計の問題点を整理し、改善に向けた道筋を探る。その際、「社会保障費用統計」のなかに現れる LTC と比較する。同統計は、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が推計し、LTC はやはりSHA に基づいている。もっとも、同じ SHA に則りつつ、IHEP 推計と社人研推計とでは結果が異なっている。なお、LTC は、対象年齢も LTC サービスを必要とする理由も、社会保険か否かといった制度も問わない。他方、わが国の介護保険は、対象者をもっぱら高齢者に限定した、社会保険を通じたサービス提供にとどまっている。

IHEP 推計の主な問題点は次の(ア)~(エ)の通りである。(ア)SHA では、LTCを身体介護などの LTC(健康)と生活援助などの LTC(社会)とに大きく分けているが、IHEP 推計では LTC(社会)について未公表である。(イ)IHEP 推計では、障害福祉サービスや障害児給付費による障害者・児を対象とした LTC、および、老人福祉施設への地方自治体独自の運営費補助のような、介護保険を通じない LTC が未計上である。(ウ)介護保険から給付される費用のうち、居宅介護支援・介護予防支援、福祉用具購入費、住宅改修費などが LTC に未計上であり、介護予防・生活支援サービス、包括的支援事業・任意事業といった地域支援事業も LTC に未計上であると考えられる。(エ)SHA では、支出が経常支出と総固定資本形成に分けられているが、IHEP 推計では総固定資本形成が未公表であり、恐らくは経常支出に混入していると考えられる。

翻って、「社会保障費用統計」における LTC では上記問題点のうち(エ)を除き、対応がなされている。SHA に基づく費用統計の整備については、これまでその必要性が訴えられつつも政府の腰は重かったが、2024 年 6 月公表の「骨太方針 2024」では、政府統計化がうたわれており、その速やかな実現が期待される。

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