リサーチ・フォーカス No.2024-014 かかりつけ医機能が発揮される制度整備の進め方 ― わが国と医療提供体制が類似した台湾を参考に ― 2024年06月12日 成瀬道紀新型コロナ禍を経験し、かかりつけ医機能が発揮される制度整備について議論が行われている。わが国の診療所は、臓器別専門医が中心に診療し、常勤医師1名の施設が多いため、よくある疾患に幅広く対応したり、夜間・休日の対応をしたりするなどのかかりつけ医機能を単独で発揮することが難しい。そこで日本医師会は、医療機関同士で連携し、地域で面としてかかりつけ医機能を発揮するとしているが、それを担保する施策の検討が進んでいるようにもみえない。世界の多くの国で、外来や在宅医療などの身近な医療であるプライマリ・ケアを担う医療機関の医師は、幅広い疾患に対応できるようトレーニングを積んだ家庭医(総合診療専門医)であり、診療所の規模はわが国より大きい。かかりつけ医機能が発揮される制度整備を検討するうえで、上述のようなわが国の特殊性を踏まえる必要がある。本稿は、診療所がわが国と同じ特殊性を持ち、フリーアクセス、出来高払いであるなど制度面でもわが国と類似点が多い台湾を参照する。台湾は、1980 年代から家庭医の育成を着実に進め、家庭医の専門医資格を取得した医師は家庭医療科を開業できる。2003 年に、複数の診療所が地域医療連携グループを形成し、会員として登録された住民に対してかかりつけ医機能を発揮することで会員数や成果に応じた報酬を得られる家庭医療包括ケアシステムを導入した。会員は、政府が一定の基準で健康リスクが高いとみられる者を抽出し決定される。本制度により、地域を面で支えることにまさに成功しており、会員の救急利用や入院を減らし、医療費を抑制するなどの成果が確認されている。以上を踏まえ、以下の五つの施策が求められる。第 1 に、総合診療専門医の育成強化である。第 2 に、総合診療科を標榜可能とすることである。第 3 に、医療機関にグループ化を促し、かかりつけ医機能の発揮を求める制度の導入である。第 4 に、そうした医療機関に対する登録制、および、人頭払いや医療の質を評価した報酬の導入である。これは、フリーアクセス、出来高払いと両立可能である。第 5 に、第4 の施策を実現するためにも必要なデータ活用の体制整備である。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)