リサーチ・アイ No.2024-022 新たな担保制度として創設される企業価値担保権 ~ 事業性融資の定着に向けて新制度の周知・利用促進が重要に ~ 2024年06月11日 谷口栄治本年6月7日、「事業性融資の推進等に関する法律案」が成立し、新たな担保制度として「企業価値担保権」が創設されることに(新法は2年半以内に施行)。企業価値担保権では、有形資産(不動産等)に加え、無形資産(事業ノウハウ、知的財産、顧客基盤等)を含めた総財産(事業価値)が担保権の対象に。新たな担保制度の創設により、①不動産担保や経営者保証に依存せず、事業実態や将来性に着目した融資(事業性融資)が受けやすくなる、②借り手の事業に対する貸し手(金融機関)の関心が高まり、より緊密な経営改善支援が行われる、といった効果を期待可能。一方、企業価値担保権の設定にあたっては、同担保権の濫用を抑制する観点から、担保を設定できる主体(担保権者)を、新たに創設する信託業の免許を受けた事業者(「企業価値担保権信託会社」)に限定。具体的に、債務者(担保権設定者)を委託者、担保権者を受託者とする信託契約を締結する形(貸し手(金融機関)が担保権者になることも可能)。今後課題となるのが、新たな担保制度の周知と利用促進。前述のように信託契約を用いる複雑な取引形態となったことで、手続きの煩雑化や管理コストの増大が懸念され、活用が想定通り進まない恐れあり。新法では、同担保権の活用支援を行う組織として「認定事業性融資推進支援機関」が整備される見通しとなっており、こうした動きも含め、新たに創設される企業価値担保権の認知度向上や利用促進、好事例の共有等を、官民が連携し、積極的に推進していくことが重要。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)