コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

オピニオン

通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護における社会参加活動の実施状況に関する調査

2024年05月13日 石田遥太郎、岩附愛子、城岡秀彦益田健甫、石塚真実


*本事業は、令和5年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業として実施したものです。

1.事業の背景・目的
 介護事業所における社会参加活動(※)については、認知症施策推進大綱(令和元年6月18日)において「通所介護(デイサービス)等の介護サービス事業所における認知症の人をはじめとする利用者の社会参加や社会貢献の活動を後押しするための方策について検討する」とされた。さらに令和3年度介護報酬改定では、通所介護サービスの運営基準が見直され、地域住民やボランティア団体等との連携および協力を行う等の地域と交流することが、新たに努力義務とされたところである。
 本事業では、通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護事業所(以下、「通所介護事業所等」という。)における社会参加活動について、実施状況や取り組み内容、事業所・職員・利用者等への効果を把握・整理することを目的に、実態調査を行った。

2.事業の概要
 通所介護事業所等の管理者/利用者・家族に対して、社会参加活動の実施状況や取り組み内容、活動における効果・課題等に関するアンケートを実施した。また、アンケート結果を踏まえて、通所介護事業所等を対象に、立ち上げ・実施にあたっての課題等を深堀するためのヒアリングを実施した。さらに、社会参加活動に取り組む利用者を担当する介護支援専門員に対して、利用者等に好影響をもたらしている事例や課題等を深掘するためのヒアリングを実施した。
 なお、本事業では、取り組み内容や活動場所等により、社会参加活動を以下3つの類型に分類している。

・活動A:事業所の中で地域住民や団体・企業等と交流する活動

・活動B:事業所の外で地域住民や団体・企業等と交流する活動

・活動C:地域住民や団体・企業等と連携し、利用者に役割がある形で行う活動(外部と連携した有償・無償ボランティア)


3.事業の成果
 本事業では、アンケート結果およびヒアリング結果を基に、社会参加活動の実施事例から見えてきた効果および立ち上げ・実施における課題を、社会参加活動の類型ごとに整理した。
 社会参加活動の類型ごとの実施割合は、活動Aが30%、活動 Bが15%、活動Cが 5%であり、事業所外での活動や地域の団体・企業と連携が求められる活動類型に関しては、実施割合が低いことが明らかとなった。また、調査結果を踏まえ、活動類型ごとに、立ち上げ・実施における課題を整理した。具体的には、社会参加活動を実施していない事業所が活動Aを立ち上げ、実施していくためには、地域に根差した活動を行う団体等(自治会や地域包括支援センター等)と関わりを持つことがポイントとなる。一方で、活動B・Cを立ち上げ・実施していくためには、事業所内外の見守り体制の構築、利用者特性や地域の団体・企業のニーズの理解をしていくことがポイントである。

4.今後の課題
 認知症基本法の基本的施策においても「社会参加」が謳われており、今後もより一層の推進が求められる一方で、本調査では社会参加活動を実施していない事業所が60%にのぼる実態が確認された。
 この実態を踏まえて、今後、社会参加活動を普及していくにあたっては、先進的な活動をしている通所介護事業所等の工夫や、立ち上げ、継続的な実施をする上で乗り越えてきたハードル、活動を通じて利用者、事業所、職員に与える効果等を発信していく必要がある。また、通所介護事業所等の事業者を支援する自治体等においても、事業所外での活動や有償ボランティアの実施可否自体に関する理解促進を図るとともに、地域の社会資源と介護事業者の接点を作っていくことが求められる。こうした自治体の取り組みを促進するために、それぞれの自治体等における効果的な取り組みを整理・発信していくことも必要である。

※本調査研究事業の詳細につきましては、下記の報告書本文をご参照ください。
報告書

(※) 本事業では社会参加活動を「介護サービスの提供時間中に、介護サービス利用者が地域住民と交流することや、(公園の清掃活動等の)地域活動や(洗車等)外部の企業等と連携した有償無償ボランティアを行うこと」と定義している。

【本件に関するお問い合わせ】
リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 石田遥太郎
E-mail:ishida.yotaro@jri.co.jp

経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ