コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

JRIレビュー Vol.4,No.115

わが国銀行セクターに求められる気候関連リスク対応の強化

2024年05月10日 大嶋秀雄


気候変動問題による社会・経済への悪影響は「気候関連リスク」と呼ばれ、地球温暖化に伴う異常気象等の被害である「物理的リスク」と法規制や気候政策の導入等に伴う悪影響である「移行リスク」に分類される。

気候変動対応では、温室効果ガス(GHG)排出削減による物理的リスクの低減はもとより、経済負荷の小さな排出削減策を用いた移行リスクの抑制も重要となる。とくにわが国は、早期の排出削減のハードルが高い企業が多く、いかに気候関連リスクを抑制して脱炭素社会への移行を円滑に進めるかが課題となっている。

わが国では、産業・規模を問わず多くの企業と取引関係がある銀行に対して、気候変動対応の支援者としての役割が期待されている。銀行にとっても、気候関連リスクは重大な金融リスクとなりうるため、対応が急務となっている。

各国金融当局も気候関連リスク対応を重視し、ロードマップ策定や取り組み方針の整理、金融システムへの影響分析等を行っている。わが国の金融庁も「金融機関における気候変動への対応についての基本的な考え方」を公表して期待される役割等を示している。

わが国でも気候変動問題に取り組む銀行は増えており、メガバンクは脱炭素目標を掲げて社内の態勢整備や投融資先との対話等を進めている。一方、地方銀行は、気候関連情報開示は広がっているものの、具体的な取り組みではメガバンクに比べて遅れが目立つ。もっとも、メガバンクを含めて試行錯誤の段階であり、取り組みの強化が求められる。

今後、わが国の銀行に求められる取り組みの方向性は次の3段階に整理できる。
(1)気候関連リスクの認識
気候関連リスクは従来の管理態勢では捉えられないため、気候関連リスクに特化した態勢整備が必要となる。ビジネス面のリスクの把握には、対話等を通じた投融資先の気候関連リスクの特定や地域特性を踏まえた投融資ポートフォリオのリスクの把握が重要となる。
(2)気候関連リスクの評価
次に、ビジネスへの影響を評価する必要があるものの、現状データや分析手法の制約から精度に課題がある。銀行は投融資先との対話や多様な情報収集でデータ制約の解消を図るとともに、各地域・産業の特性を踏まえた評価手法の開発等に取り組む必要がある。
(3)気候関連リスクへの対応
気候関連リスクへの対応の方向性としては、①様々なリスク管理の枠組みに気候関連リスクを組み込んで備えを強化するとともに、②投融資先における気候変動対応を支援して気候関連リスクの軽減を図ることがある。

(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ