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JRIレビュー Vol.4,No.115

コミュニティベースのオーバーツーリズム(CBOTA)対応の在り方

2024年05月10日 高坂晶子


わが国を含め世界の観光地の多くは順調に再興を遂げつつある半面、オーバーツーリズム(以下、OT)に悩むケースも増加している。

従来、わが国政府は「OTが生じているとは言えない」としてきたが、2023年夏、岸田政権は一転してOT対応の本格化を表明した。ただし、10月公表の対策パッケージには既存の取り組みやOTと直接関係のない施策も少なくなく、実効性には疑問がある。

そもそもOTは、地域ごとに内容の異なる問題・トラブルが複合的に生じる、私的な活動である個人の観光行動は法規制に馴染みにくい、等の事情から、一般的解決策を見出すことは難しい。問題発生地ごとに、予防措置と対症療法的なダメージコントロールを機動的に行うことが基本であり、政府は対策パッケージの最後に挙げた地域連携によるOT対応を強化することが望まれる。

地域連携、すなわちコミュニティベースのOT対応については、海外に先行事例が散見される。今後、わが国が先行事例にならってOT対応を進めるに当たり、以下に留意することが必要である。
住民をはじめとする地域の関係主体においては、①観光受容度の向上、②多様な主体が参画する仕組みづくり、③幅広い意見に耳を傾ける仕組みづくり、④意見の取り扱いの「見える化」、が求められる。
行政やDMO(観光地域づくり法人)に求められる取り組みとしては、①住民等の意見を施策に反映させ実行する、②これら施策に必要な規制緩和や法令を見直す、③地域主導のOT対応事例を他地域が参照・活用するための仕組みを作る、が挙げられる。

コミュニティベースのOT対応の意義は、従来蚊帳の外に置かれてきた住民をはじめとする地域の主体が議論に参画し、合意形成に向かうための環境整備にあり、現実の問題への対処能力には自ずと限界がある。行政やDMOは、この点を補うべく、データ収集、討議の進行支援、具体策の立案・執行など実務的役割を担うことが期待される。

日本人の伝統的な暮らしの場にインバウンドが足を踏み入れるような観光のスタイルが一般化している状況下、観光客と受け入れ側住民との距離は縮まりつつある。そのため、コミュニティベースのOT対応を支える行政やDMOの役割の難度と重要度が増し、それを果たしうる態勢の整備が喫緊の課題である。

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