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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.24,No.93

深刻化する中国の若年失業問題 ─大卒者の急増と雇用ミスマッチの拡大が主因─

2024年05月10日 佐野淳也


中国では、若年失業率が上昇傾向をたどっている。時系列データが入手出来る旧基準ベースでみると、2023年6月に
21.3%と過去最高の水準に達した。若年失業問題が深刻化した主因は、大卒者の急増と雇用ミスマッチの拡大の二つである。

企業や学生を取り巻く環境の変化が、大卒者の急増やミスマッチの拡大をもたらした。労働需要側と労働供給側に分けて整理すると、需要側の要因としては、雇用機会の不足、急成長企業への政府介入によるICT産業等の不振、企業の雇用制度・給与体系の見直しの遅れ、が挙げられる。一方、供給側の要因としては、2000年代以降の高等教育機関の拡大政策、同政策の下での大学生のホワイトカラー志向の高まり、が挙げられる。

政府は、企業による採用促進や職業教育機関への進学誘導などの若年失業対策を講じてきたものの、それらは対症療法ないしプロパガンダであり、抜本的な解決策には程遠い。ミスマッチの早期解消は困難で、若年失業問題は長期化する可能性が高い。

若年失業問題が中国経済に及ぼす影響は、短期的なものと長期的なものが考えられる。短期的な影響は、生産現場での人材不足の深刻化、若年層の消費低迷などを通じて、景気に下押し圧力がかかることである。長期的な影響は、①人的資本形成が進まないことによる労働生産性の低下、②少子化の加速による労働供給力の低下、③起業や新興企業を生み出すダイナミズムの喪失、の3ルートを通じて、潜在成長率を下押しすることが考えられる。

高学歴志向の是正やミスマッチ解消への即効性が期待出来る政策として、企業の雇用制度・給与体系の見直しが挙げられる。習近平政権がこうした抜本的な改革に手をつけず、これまでと同じ対症療法やプロパガンダに終始すれば、「横たわり族」となる若者が増加するとともに、政権に対する信認も低下しかねない。

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