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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.24,No.93

個人消費は中国経済を救う切り札になるか

2024年05月10日 三浦有史


中国において、ゼロコロナ政策の転換によるリベンジ消費は期待外れに終わった。消費者信頼感指数は、上海市ロックダウン(都市封鎖)を契機に2022年4月に急低下し、その後も底ばい基調である。家計は、雇用環境が厳しく、所得増加も期待出来ないと考え、消費より貯蓄を優先するようになっている。

住宅購入意欲がある世帯の割合は、住宅価格上昇に対する期待が弱まるのに伴い、2019年から緩やかに低下している。中国は、住宅価格の「上昇」を予想する家計が減り、購入を見合わせることで、不動産開発企業による住宅価格の値下げが誘発され、それが「上昇」予想をさらに弱めるという悪循環に陥っている。

消費意欲の低下の背景には、習近平政権が不動産危機と地方政府債務危機というふたつの危機を解決する抜本的な改革を議論することなく、ひたすら問題の先送りを図っていることに対する不安の裏返しという側面がある。

ゼロコロナ政策の導入策を契機に共産党は決して間違えないというプロパガンダに対する不信感が高まり、多くの家計は頑強で安定的と見ていた収入や雇用が思いのほか脆弱であると認識するようになった。消費停滞の背景には、多様な意見を認め、最善策を議論するという土壌が失われ、政策を一方的に押し付けられることに対する国民の不満がある。

家計を取り巻く環境の変化、具体的には、①所得増加に対する期待の低下、②若年層の雇用不安の高まり、③ひっ迫する年金財政や高齢化に伴う医療費負担の増加、④住宅価格の低下に伴う逆資産効果の拡大、⑤養育費負担の増加も、個人消費を下押しする要因である。

中国のGDPに占める個人消費の割合は国際的に見ると極端に低く、消費主導経済への移行が進む気配さえ見えない。習近平政権は投資主導経済から脱却出来ず、厳しい経済運営を余儀なくされるため、中国の経済成長率は2028年に3.4%に低下するというIMFの予想すら下回る可能性が高い。

2024年に入っても、消費主導経済への移行が進むことをうかがわせる材料は出ていない。習近平政権は、閉塞感が高まるのに伴い、貯蓄志向を強める家計の先行き不安に向き合う政策よりもプロパガンダを重視するようになっている。第14次5カ年計画(2021 ~ 2025年)で掲げた2035年に中位程度の先進国になるという目標の実現は難しいであろう。

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