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リサーチ・フォーカス No.2024-002

トランプ再選時の米国環境エネルギー政策~その展望とわが国に求められる対応~

2024年04月03日 栂野裕貴


米国では、本年 11 月5日に大統領選挙を控え、民主党からはバイデン大統領が再選を目指す一方、共和党ではトランプ前大統領の候補者指名がほぼ確実に。現時点の情勢をみると、トランプ前大統領が勝利する可能性は相応に高い。

トランプ前大統領が再選されると、米国の環境・エネルギー政策は大幅に変更される可能性。予想される主な変更点は、①パリ協定離脱や途上国支援縮小といった国際連携からの離脱、②自動車排ガス規制等の環境規制の緩和、③原油・天然ガスの増産、④蓄電池・EV 等の普及を支援するインフレ抑制法の修正、の4点。

こうした政策変更に際し、わが国政府や企業には以下の取り組みが求められる。
(1) 国際ルール整備による米国企業への脱炭素要請
わが国を含む各国政府は、企業に脱炭素に向けた取り組みを促す国際ルール整備等を加速させる必要。具体的には、気候関連情報開示に関する国際基準の導入拡大や開示の質向上、サプライチェーン全体の排出量計測に向けた国際的なルール整備やデータ連携の仕組みづくり等。企業でも脱炭素に向けた取り組みやその開示を強化し、企業セクター全体の脱炭素に向けた機運を高めることが重要。

(2) 途上国支援・国際連携の強化
わが国政府は、欧州などの他の先進国と連携しつつ、資金面だけでなく技術・人材面も含む多面的な途上国支援を強化することが不可欠。具体的には、資金拠出の拡大や、二国間クレジット制度等を活用した技術提供、途上国における脱炭素戦略の策定・推進を担う人材育成の後押しなど。また、企業が途上国支援に参画することによって、自社のビジネスの拡大を図ることも有効。

(3) 米国の政策転換を踏まえた脱炭素戦略の見直し
米国の政策変更に応じてわが国政府は脱炭素戦略を見直す必要。たとえば、米国の蓄電池生産が伸び悩むと蓄電池の調達難や中国依存の強まりが想定され、蓄電池サプライチェーン強靭化に向けた施策の練り直しが必要に。一方、水素など新政権と連携可能な分野の強化も重要。また、企業においても、政権交代による米国の政策変更リスクを認識したうえで、事業戦略を立案することが不可欠。

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