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介護施設等におけるカメラタイプの見守り機器の効果的な活用に向けた実態調査研究事業

2024年03月08日 石田遥太郎城岡秀彦、岩附愛子、大内亘、板花俊希


*本事業は、令和4年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業として実施したものです。

1.事業の背景・目的
 介護施設等に導入されているカメラタイプの見守り機器について、導入施設等への実態調査を通して導入実態や導入効果、効果創出や適切な運用に向けたポイント等を整理し、カメラタイプ見守り機器の効果的な活用に向けた介護施設等向けのポイント集を作成した。

2.事業の概要
 「介護ロボットの導入支援事業」(地域医療介護総合確保基金)を活用して見守り機器を導入した介護施設等に対して、カメラタイプの見守り機器の導入状況、運用状況、導入効果、導入・活用時の課題等について定量的に把握することを目的にアンケート調査を実施した。また、アンケート調査を踏まえて、カメラタイプの見守り機器を運用し、介護現場および入所者に対して、好影響をもたらしている事例と課題があった事例を抽出し、深堀りのためのヒアリング調査を実施した。加えて、国内のカメラタイプの見守り機器を開発・販売している主要メーカーに対して、製品の特徴や機能、サポート体制、導入済み施設の特徴、今後の課題や展望に関するヒアリング調査を実施した。

3.事業の成果
 各種調査を通じて、自治体の補助事業を活用しての見守り機器を導入した介護施設等のうち、カメラタイプの見守り機器の導入割合は約3割であり、うち半数強が「通常映像型」を導入し、半数弱が「シルエット型」を導入していたことが明らかとなった。
 また、導入効果としては、転倒・転落事故防止や早期発見、事故検証、夜間訪室の負担軽減、高齢者の睡眠の質改善等が挙げられた。導入効果が実感されている施設の特徴として、施設長および現場スタッフがメンバーとして参画した委員会を立ち上げている、多職種のアセスメント結果を踏まえてカメラタイプの設置対象者を選定している、活用に向けた業務ルールを策定した上で業務オペレーションを見直している、導入効果や設置の必要性を定期的に検証・モニタリングしている、といった点が挙げられた。
 さらに、カメラタイプの見守り機器の活用にあたり、高齢者本人等の権利擁護への配慮が必要であることが明らかとなった。例えば、高齢者本人に対して導入目的や効果等を丁寧に説明し同意を得ている、不必要なタイミングで撮影映像を見ない等のルールを定めている、画質調整を行っている、録画データを閲覧できる職員の範囲を限定している、といった事例が確認された。
 これらの調査結果および検討委員会での検討に基づき、カメラタイプの見守り機器の活用に向けた7つのポイントとして整理し、「介護施設等におけるカメラタイプの見守り機器の効果的な活用に向けたポイント集」を作成した。



4.今後の課題
 カメラタイプの見守り機器の活用にあたり、高齢者本人に対して、利用目的や効果、データ管理方法等を説明し、納得してもらい、高齢者本人の意思を反映した上で機器を使用する必要がある。しかし、本調査では、書面上の説明・同意に終始している、本人ではなく家族等への説明・同意で代替している、といった実態が確認された。今後、介護事業所側の負担に配慮しつつも、高齢者本人の意思に基づいてカメラタイプの見守り機器が活用されるような意思決定支援のあり方を検討していく必要がある。併せて、カメラタイプの見守り機器を含む介護ロボット・ICT 等から得られたデータ・情報の安全な管理方法に関する検討や、カメラ画像に依存しない見守り機器のあり方に関する検討も行っていく必要がある。

※本調査研究事業の詳細につきましては、下記の報告書本文をご参照ください。
【報告書本編】

【本件に関するお問い合わせ】
リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 石田遥太郎
E-mail: ishida.yotaro@jri.co.jp



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