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リサーチ・フォーカス No.2023-051

東証改革に求められる今後の方向性-企業と取引所の相乗的な競争力強化に向けて-

2024年03月05日 野村拓也


東京証券取引所(東証)は、2022年4月、市場区分のコンセプトの曖昧さや企業価値向上の動機付けの不十分さを踏まえ、投資家にとっての市場の魅力を向上させる観点から、5つの上場市場を3つ(プライム、スタンダード、グロース)に再編。

昨年1月には、プライム市場の上場基準に適合していない企業に対する「経過措置」の適用期間を明確化。3月には、「資本コストや株価を意識した経営」、「株主との対話の実施状況等に関する開示」について、実現に向けた取り組みの方向性を公表。特に、PBR1倍未満の企業に対して、改善に向けた取り組みの開示を求める内容。

東証改革の効果は既に一部で確認可能。「資本コストや株価を意識した経営」に係る開示は、昨年末までに3月期決算のプライム市場上場企業の59%が実施。PBRについても、プライム市場上場企業のうち1倍未満の割合は50%から45%まで低下。

一方、英国では、自国金融資本市場の競争力向上の観点から上場規則改革が進展。具体的には、上場審査に係る要件の見直し(時価総額引き上げ、公開流通株式比率引き下げ等)が実施されたほか、今後、プレミアム市場とスタンダード市場の統合、非上場中小企業がアクセス可能な取引所の設立等がなされる見通し。

東証改革については、企業と取引所の相乗的な競争力強化に向けて、その実効性を高める観点から、今後も不断の見直しが必要。具体的な方向性は以下の通り。
(1)PBR1倍という基準を導入し、対応策の開示を求めたことにより、資本コストや株価を意識した経営の重要性を企業に意識付けたが、今後は、形式主義に陥ることがないよう、業種や事業戦略に応じた柔軟な対応を促すことも肝要。

(2)株主との対話に関して、企業が投資家ニーズを捉え適切に対応するよう方向づけることが重要。企業は、課題とされる対話に係るリソースの確保や、経営層による内外コミュニケーションの深化が必要。

(3)英国の事例を踏まえ、わが国でも上場基準の妥当性について継続的に検証すべき。特に、英国で引き下げられた公開流通株式比率は、わが国企業が各市場の上場基準に未適合となる主因となっていることから、再検証の余地あり。

(4)市場区分の見直しに対する投資家の評価を把握し、さらなる改革の必要性についても継続的に議論すべき。英国の動きに盲目的に追随する必要はないものの、その背景にある、投資家の分かりやすさに対するニーズや、非上場中小企業の資金調達ニーズの有無を検証し、必要に応じて対応策を検討すべき。


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