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フリーランス活躍の舞台としての労働者協同組合

2024年02月27日 小島明子


 2022年10月1日に労働者協同組合法(※1)が施行され、約2年近くが経過をした。法律の施行以降、既に約70(※2)近くの団体の労働者協同組合が設立された。第一号となったのは、三重県四日市市のCamping Specialist 労働者協同組合である。その後の設立も、多くが東京圏以外のエリアとなっており、地方を中心に労働者協同組合設立の動きが顕在化している。また、労働者協同組合法では、労働者派遣事業以外の事業を行うことは認められており、実際にも、介護や子育て支援等を中心とした事業から、終活支援、音楽イベントの企画、造園業など事業内容も多種多様な労働者協同組合が設立されている傾向がある。

 さらに、注目点として挙げられるのが、フリーランス(※3)を中心的担い手とする労働者協同組合が複数設立されていることである。「フリーランス」とは、「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」を指す。ここ数年、働き方改革の流れを受けて注目をされるようになったことなどを背景に、総務省によって、令和4年に基幹統計として初めてフリーランスについての調査が行われている。同調査によれば、有業者のうちフリーランスの数は209万人に上るとされている。

 本稿では、筆者のヒアリング等に基づき、フリーランスによって組成された労働者協同組合の主な特徴を2点述べたい。
 1つ目は、労働者協同組合で働くフリーランスの多くが副業として、これに関わっているという点が挙げられる。副業・兼業を解禁する企業がまだ限定的であるのに対して、フリーランスの場合は、企業勤めの人に比べると労働者協同組合の設立に関わったり、運営に参画するハードルは低いという背景が考えられる。
 2つ目は、異なる専門性を持つメンバーが集まる組織に結果的になっている点が挙げられる。多様なメンバーが集まるからこそ、各メンバーの本業とは異なる、今までにない新しい事業を立ち上げることが可能になって、地域社会への貢献に繋がる団体も出てきている。さらに、そこに携わるフリーランスの方々からは、新しい事業を立ち上げた経験と実績を通じて、今後の新たなキャリアアップを図っていこうという積極的な姿勢を感じることも度々ある。
 
 労働者協同組合の設立・運営参画は、多くのフリーランスにとって新しい働き方の選択肢の1つになる可能性がある。さらに、前述の調査によれば、国内では中高年世代のフリーランスが多いことも分かる(※4)。長年の経験やスキルを有する中高年世代こそが、その良さを活かして活躍できる格好の舞台にもなりうる。労働者協同組合の可能性は大いに広がっている。

(※1) 参考文献「協同労働入門」(経営書院) 株式会社日本総合研究所 小島明子・弁護士 福田隆行(共著)
同法は、「協同労働」の理念を持つ団体のうち、同法の要件を満たす団体を「労働者協同組合」として法人格を与えると共に、その設立、管理等の必要事項を定める法律である。「協同労働」とは、働く人が自ら出資をし、事業の運営に関わりつつ、事業に従事するという働き方を指す。協同労働に関わる人達(組合員)は、組合を組織し、組合の「出資」「経営」「労働」のすべてを担うことになる。
(※2) 国税庁ホームページ
(※3) 「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(内閣官房 公正取引委員会 中小企業庁 厚生労働省)」(令和3年3月26日)では、「フリーランス」とは、「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者を指す」と定義している。
(※4) 総務省「令和4年に基幹統計年齢階級別」を踏まえると、「45~49歳」(24万人)、「50~54歳」(24万人)、「55~59歳」(22万人)の順に多くなっている。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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