リサーチ・アイ No.2023-084 2023年の出生数は▲5.8%減、出生率は1.20前後に低下へ 2024年02月14日 藤波匠2023年の出生数(日本人)は、前年に比べて4万人以上少ない72.6万人となる見通し。減少率は▲5.8%減となり、16年以降減勢が加速した中でも、19年と並ぶ最大の減少率となる公算。合計特殊出生率は、過去最低であった22年の1.26を下回ることが確実。1~9月の人口動態統計概数から試算した23年の合計特殊出生率は、1.20程度になる見通し。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)から、23年4月に公表された将来人口推計(日本人)の出生数(中位)との比較では、23年の実績が推計値を1万2千人下回ることになる。社人研の将来人口推計では、24~30年は出生数が横ばいで推移し、74万人以上を維持するとしており、合計特殊出生率も2030年に向けて徐々に回復し、その後長期にわたり1.30以上を維持する見通しとなっている。しかし、足元23年の実績値は中位推計を下回り、先行きも中位推計から大きく下振れして推移する展開となることが懸念される。大幅な出生数減少の背景には、コロナ禍で顕在化した婚姻数の減少がある。23年の婚姻数は、前年対比▲5.8%減の47万6千組となる見通し。婚姻数は、コロナ禍に見舞われた20年に大幅減少したのち、22年はその反動からわずかに持ち直し。その後、コロナ禍が収束したことで、結婚を先延ばしにしていた人たちを中心に巻き返す動きが期待されたが、2023年に再び大きく下振れた形。婚姻数の減少は、2~3年後の出生数に影響を与えることが知られており、2020年以降コロナ禍によって婚姻数が急減した影響が、23年の出生数の大幅減少となって顕在化したもの。婚姻する人の割合の低下は、過去一貫して少子化の一因であったものの、2010年以降は出生数減少の主要因ではなくなっていた。ところが、コロナ禍で雇用の不安定化や人の出会いが極端に抑制されたことをきっかけに、婚姻数の減少が顕著となり、再び少子化の主要因に浮上してきたとみられる。社人研がコロナ禍で実施した出生動向基本調査でも、一生結婚するつもりのない人の割合が上昇傾向にあり、とりわけ近年は女性でその傾向が顕著である。社会進出が進む一方、結婚や出産によって男性よりも負担が増えがちで、キャリアや収入などを失う可能性の高い女性の結婚意欲の低下が表面化したものとみられる。ジェンダーギャップやアンコンシャスバイアスなどを早急に排除し、男女がともに社会と家庭での役割を等しく担っていくことのできる環境が必要となる。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)