気候変動、人権、DE&I(Diversity, Equity and Inclusion)など、企業が直面するサステナビリティ重要課題やそれらへの対策を社内で理解させ、普及させることが急務となっている。とりわけ、SCOPE3のように自社だけでなく関連パートナー企業を含めたサプライチェーン全体でのサステナビリティへの対応が必要とされていることは見逃せない。さらに、足元の課題に焦点を当てるだけでは十分とは言えない。AIやゲノム編集といった技術の進歩や人々の価値観の変化などが、これまでのサステナビリティ課題への解釈に大きな影響を与えていることから、企業はこれからの環境・社会変化を見据えて適時・的確に対応を進化させる必要がある。この進化にはビジネスモデルの変革も含まれる可能性があり、全社でサステナビリティを理解し、推進する企業文化の確立が必要なのだ。
2020年、日本総合研究所では20年以上にわたる企業のESG側面の調査・分析活動の実績を生かし、内発的にサステナビリティを推進する人材育成に寄与する研修プログラム「SAKI (Sustainability Action and Knowledge Immersion)for X」を開発し、これまで様々な業種の企業に提供してきた。SAKIは中長期目線で、自然資本を含む幅広いステークホルダーに対して価値を創出していくことが、自らの企業価値向上に繋がることを体感するワークを中心に構成されている。SAKIを実施して得られる効果の一つは、自分の業務とサステナビリティ課題との関係性を理解できるようになること、従来の収益追求だけを目指すときの時間軸ではなく、中長期目線で事業を俯瞰できるようになることだ。具体的には、自社の製品やサービスの売り上げ拡大が社会や環境に与えるポジティブな効果を増幅させたり、ネガティブな効果を削減することに繋がることを第三者に十分説明できるよう、業務とサステナビリティとの関係を様々な観点から言語化・可視化するワークを行なっている。これは将来の社会や環境の変化を踏まえて、自社がこれから生み出すべき価値を議論する土台にもなる。