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リサーチ・フォーカス No.2023-038

取締役会のジェンダー・ダイバーシティを巡る世界的潮流と日本の対応

2023年11月24日 森口善正


近年、上場企業の取締役会のジェンダー・ダイバーシティを強化する動きが世界的に進展している。こうしたなかで、日本企業に対して機関投資家が求める水準も次第に高まりつつある。日本の上場企業の女性取締役比率は、クオータ制を導入している欧州諸国や、数値目標を設定して企業に開示義務を課す英国の半分程度の水準にとどまる。また、マレーシアやタイ、シンガポール、香港(中国)の証券取引所全上場企業の女性取締役比率はすでに日本の水準を上回っており、日本企業の今後の取り組み次第ではアジア主要国からも取り残される恐れがある。

東京証券取引所は 2023 年 10 月、プライム市場上場企業に対し、①2025 年を目途に女性役員を 1 名以上選任するよう努めること、および②2030 年までに女性役員比率 30%以上を目指すことを数値目標として設定した。これは日本企業における「女性の活躍推進」や「男女の機会均等」の観点からは一つの大きな前進である。しかし、「取締役会のジェンダー・ダイバーシティ強化」の観点からは、取締役や監査役以外の役員等も目標に含まれているほか、あくまで努力義務にとどまるといった点で、不十分かつスピード感を欠いている、といわざるを得ない。

したがって、政府および東京証券取引所は、①上場企業に対する取締役会のジェンダー・ダイバーシティ関連データの開示義務づけと集計値の公表、②プライム市場上場企業に対する女性取締役比率目標の達成義務づけと未達成企業に対する理由等の開示義務づけ、③TOPIX100 構成企業(もしくは時価総額1兆円以上のプライム市場上場企業)に対するより高い目標(比率・達成期限)の設定と達成状況のモニタリング、④コーポレートガバナンス・コードにおける全上場企業に対する 1 名以上の女性取締役の選任義務づけ、等を早急に実施すべきである。

日本企業、とりわけプライム市場上場企業としては、取締役会(ないしは指名委員会)がサーチ型人材紹介会社を活用するなど、危機感を持って女性取締役の増員を進めていく必要がある。社内において女性の役員・管理職が十分に育成されていない日本企業においては、女性役員・管理職比率等の測定可能な目標を改めて設定したうえで、明確な時間軸の下、女性人材の育成を PDCA を回しつつ計画的に進めていくことが不可欠である。

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