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リサーチ・アイ No.2023-059

IMFによるグローバル銀行ストレステストのポイント①~スタグフレーション下における金融面のリスクの所在~

2023年11月22日 内村佳奈子


国際通貨基金(IMF)は、本年10月、国際金融安定性報告書(GFSR)において、29ヵ国、約900行を対象としたストレステストの結果を公表。今回のテストでは、各国毎に2023~25年の3年間のストレスシナリオを設定。世界全体では、2023年に実質GDP成長率が▲2%と落ち込む一方、インフレ率が6.3%に高止まり、短期金利も5.6%まで上昇するスタグフレーションに陥った後、24~25年にかけて徐々にインフレが収束、景気も回復していく想定。

上記シナリオ下における銀行財務への影響をみれば、対象行全体の普通株式等Tier1比率(CET1比率)が、2022年の12.6%から23年に10.1%まで低下。また今回のGFSRでは、テスト期間中にCET1比率が7%を下回る、もしくは、5%ポイント以上低下する銀行を「脆弱な銀行(Weak Banks)」と定義。その数が、中国を中心に全体の2割程度の215行に上ると指摘。

今回のストレステストで注目されるのが、先進国と新興国で主たるリスクの所在に違いがみられる点。ストレスシナリオ下のCET1比率の変動要因を地域別にみれば、米国やユーロ圏などの先進国では、金利上昇に伴う保有債券の評価損による影響が大きい一方、中国などの新興国では、クレジットコストの増加がCET1比率の押し下げに大きく寄与。

ストレスシナリオ下における主たるリスクの所在が異なる背景として、IMFは、ドイツをはじめとする先進国の銀行では、低金利環境が長引くなか、相対的に長めのデュレーション(残存期間)の債券を保有していたこと等から、金利上昇による評価損が生じやすい点を指摘。一方、間接金融主体で、GDP対比で見た企業向け貸出の額が大きい新興国では、先進国と比較して、景気悪化時の企業倒産の拡大が、銀行のクレジットコストの増加として反映されやすいと指摘。

このようなストレステストの結果を受けて、IMFは、足元において金利が高止まりするなか、金融システムの脆弱性・不透明性は払拭されておらず、新興国、とりわけ中国における不動産市場の混乱がクレジットコストの増加につながり得ると主張。わが国金融セクターとしても、世界経済の先行きが見通し難い状況下、各国の景気やインフレの動向とそれを受けた金融システムの健全性の状況、さらには、わが国の金融・経済に与える影響について、引き続き注視していく必要あり。


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