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【フィンランドの街で見つけた教育を支える仕掛け】
自然と子どもたち

2023年11月21日 木下友子




 2023年9月下旬、教育事業R&Dプロジェクトメンバーの青山木下は、我々が開発を進める「子ども社会体験村」の出発点となったMe & My Cityに関連する視察と関係者ヒアリングのためにフィンランドを訪問した。このコラムでは、我々が現地で体験した・見つけた・感じたさまざまな「教育を支える仕掛け」をごく主観的につづってみたい。「シリーズ 子ども社会体験村」と併せて、気楽にお読みいただければ幸いである。

 早朝にフィンランドに着陸する飛行機の窓から、点在する湖や青々とした森がはるか彼方まで広がっている光景を見て、「ああ、フィンランドに来たのだ」と感じた。出国前にフィンランドに関するさまざまな本や観光ガイドを読んだが、その多くで言及されていたのが、フィンランドの人々の生活における自然の大切さ、身近さだった。これまでさまざまな国や地域を訪問したが、これほどまでに緑と深い青で埋め尽くされた場所は初めてで、その美しさに目を奪われた。

 この美しい自然がフィンランドの子どもたちの教育においても重要な役割を果たしていることは、出国前に対談した在日フィンランド大使館のレーッタ・プロンタカネン氏(参考:【フィンランド式】子どもの頃から「アントレプレナーシップ」を育む教育システムとは (newspicks.com))の発言からも感じていた。フィンランドで浸透しているフェノメノンベース・ラーニングを紹介するなかで、「森に出かけて動植物について学び、動植物や気候の変化も観察する」という例を出されていたからだ。また、フィンランドの小学校で教えていた経験のある日本人教師からは、「子どもたちはブルーベリー専用のスコップを持っていて、季節になると学校の裏の森にみんなでブルーベリーを取りに行くのを楽しみにしていた」というエピソードも聞いていた。国土の7割以上が森林でおおわれるフィンランドでは、教育の一環として森に出かけることが一般的であるようだ。

 現地で過ごす間にも、自然と子どもたちとのつながりを感じることが何度もあった。訪問した学校の廊下に飾ってある子どもたちの作品が虫や魚を題材にしていたり、なぜか教室にきのこに関するポスターが貼ってあったり、図書館の建物に木がふんだんに使われていたり、とにかくあちこちで子どもが自然と触れ合う機会や仕組みがあるようだった。また、今回の出張でご協力いただいたオウル市からは、休みの日の過ごし方としてハイキングなど自然と触れあうアクティビティを多く紹介いただいた。

 解剖学者の養老孟司氏は、子どもが健全に育つ条件として、子ども時代の自然との触れ合いの重要性を挙げている(※1)。確かに、フィンランドで過ごしてみると、同国の子どもたちの生活満足度、成長してからの幸福度の高さには、子どもたちの生活と自然が密接に結びついていることが強く影響を与えているのだろうと思わずにはいられなかった(※2),(※3)

写真:首都ヘルシンキの中心部。白樺が美しく並ぶ。




(※1) 【公式】養老孟司 『自然体験と教育の話』〜健全に育つとは何か?その根本を考える〜(YouTube)
(※2) PISA 2018では、生徒に0~10までの11段階で生活満足度を主観的に報告させている(数字が大きいほど満足している)。フィンランドの生徒の生活満足度の平均は7.61であり、OECD加盟国の中では上から3番目である。なお、日本の生徒の生活満足度の平均は6.18であり、OECD加盟国の中では下から3番目である。また、学力が高い国では生徒の生活満足度が低い傾向があるが、フィンランドはこの傾向の例外に属している。すなわち、読解力がOECD平均より高いにもかかわらず、生活満足度もOECD平均より高い。(OECD (2019), PISA 2018 Results (Volume III): What School Life Means for Students’ Lives, PISA, OECD Publishing, Paris, https://doi.org/10.1787/acd78851-en.)
(※3) フィンランドは世界幸福度調査の国別ランキングにおいて1位となっている(Helliwell, J. F., Layard, R., Sachs, J. D., Aknin, L. B., De Neve, J.-E., & Wang, S. (Eds.). (2023). World Happiness Report 2023 (11th ed.). Sustainable Development Solutions Network, https://worldhappiness.report/ed/2023/.

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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