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【シリーズ 子ども社会体験科“しくみ~な”の開発】
第2回 Me&My City 小学校での学習

2023年11月21日 青山温子




 学内での学習と学外施設での体験を通じて子どもたちに世の中の仕組みを包括的に教えるMe&My Cityのカリキュラムにおいて、学校の一番の役割は「体験当日に向けて、子どもたちを万全に整った状態にすること」である。
 この目的を達成するためのフェーズは、大きく3つに分けられる。1つ目は、Me&My Cityに臨む「教員の準備」、2つ目は、子どもたちの「学校での学び」、そして最後は、体験施設訪問後の「振り返りとフィードバック」である。本稿では、これらのステップに沿って、Me&My Cityが学校でどのように運用されているのかを、2つの小学校の授業視察と、3つの小学校の教員へのインタビューの結果から紹介する。



1.教員の準備
 Me&My Cityを運営するNPO団体のNYTは、教員に対して事前トレーニングを提供している。このトレーニングは、教員がMe&My Cityとはどのようなカリキュラムなのか、カリキュラムはどのように進むのか、ワークブックと呼ばれる教材はどのような内容なのか、を理解するためのものである。ただし、このトレーニングは原則、初めてMe&My Cityを教える教員が受講するもので、2回目以降の教員が受講することは多くはないようだった。
 また、教員がMe&My Cityを進めていくにあたって重要な役割を果たしているのが、教員向けのポータルサイト(以降、ポータル)である。このポータルには、教員がMe&My Cityを進めるにあたってのプロセスが約10のステップで示されており、折々のタイミングで必要となる資料も格納されている。資料は、各レッスンの補足教材や、子どもたちが体験施設で体験する仕事の求人票など授業で使用するものだけでなく、保護者向けの説明資料や、体験施設内での子どもたちの写真撮影に関する許諾フォームまで多岐にわたる。教員の準備の負担を極力削減しようという配慮がうかがえる、きめ細やかな作りになっており、我々がインタビューをした教員はみな、「ポータルに示されている手順に通りに進めていけばよいので、迷ったり、困ったりすることはない」との意見で一致していた。

2.学校での学び
 子どもたちは体験施設訪問までに、ワークブックを使用して社会、経済、金融、仕事について9つのレッスンを通じて学ぶ。各レッスンの冒頭には目標が明記され、そのレッスンで学ぶ内容の解説と用語が1ページ目でコンパクトにまとめられている。子どもたちは、その後の豊富なアクティブラーニング(※1)型エクササイズを通して目標とする知識やスキルの獲得を目指し、レッスンの最後には、その目標をどの程度達成したかを振り返る、という構成になっている。ワークブックの登場人物は多様性に富んでいて、人種だけではなくロボットも同じ職場で働く仲間として登場する。ワークブックを通じて繰り返し伝えられる「すべての人が平等である」「すべての仕事に価値がある」というメッセージも印象的である。また、エクササイズのなかには建物や道路が描かれたシールを貼って街をつくる作業もあり、頭だけでなく手先も動かす仕掛けがある。
 なお、ワークブックは全国共通だが、これをどのように教えるのかは各教員の裁量に任されている。ただし、我々が訪問したいずれの学校でも、机を半円型に配置したり、月1回はグループを変更したりするなど、子どもたちの間でディスカッションや教え合いが生まれやすくなるような環境の工夫が見られた。
 学校内での学びの重要なイベントとして、体験施設での仕事を決めるための「面接」があるが、この実施方法も教員の裁量が大きい。ある学校の教員は「3年生から担任として受け持っている子どもたちなので、性格や特性をよく理解している。これを踏まえて、子どもたちが希望する体験施設での仕事内容を紹介しながら、子どもたちが自分に適していると納得できる仕事を割り振っていく。」としていた。一方で、別の学校の教員は「(次学年となる)中学校1年生から彼らを担当するキャリアカウンセラーに、子どもたちのことを理解してもらう機会とするべく、カウンセラーが子どもたちの性格や嗜好、その仕事を選んだ理由を聞きながら、キャリアの専門家の目線で最適と考える仕事をマッチングしている。」としていた。いずれの場合も、セレクションのための「面接」というよりも、それぞれの子どもに最も適した仕事は何なのかを見つけるための「対話」であることが特徴的である。

3.振り返りとフィードバック
 体験施設での1日を終えた後、子どもたちはこれまでの学校でのレッスンや体験施設での自分たちの活動を振り返り、パフォーマンスを評価する。同時に、Me&My Cityに対するフィードバックも行う。こうした教員や子どもたちからのフィードバックはNYTに届けられ、カリキュラム自体の評価や改良のほか、カリキュラムが子どもたちの社会に対する態度や考え方に与える影響などの把握に使われている。

 インタビューをした教員たちは口をそろえてMe&My Cityのカリキュラムに参加することを「大変だと感じたことは全くない」と言っていた。Me&My Cityの導入は、「仕事が増えた」とネガティブに受け止められているのではなく、「子どもたちが体験施設で活動に熱中している様子を見ることが嬉しい」と、ポジティブに受け止められているようだ。
 これは、体験施設の活動が子どもたちにとって魅力的であることもさることながら、NYTが教員用ポータルをはじめとして、教員になるべく手間をかけさせない手厚いサポートを提供している結果と言えよう。
 体験施設での魅力的な活動については、次稿にて紹介する。


(※1) 教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入 れた教授・学習法の総称。(出所:新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申):文部科学省 (mext.go.jp) 用語集 (mext.go.jp)(サイト確認日:2023/10/30))


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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